出入国在留管理庁(入管)が4月に行った収容外国人の仮放免が全国で563件に上り、昨年1年間の総件数の約3分の1に当たることが分かった。警視庁渋谷署が2日、覚醒剤を販売目的で所持したとして逮捕したイラン人の男が、4月に仮放免されていたことも判明した。入管は新型コロナウイルス対策として密集を避けるため仮放免の積極的な運用を進めていた。
入管は不法滞在する外国人の身柄を拘束し、国内の施設に収容している。病気などやむを得ない場合には、定期的な出頭や行動範囲制限といった条件付きで仮放免が認められる。
入管によると、4月の1カ月間に新規に行われた仮放免件数は563件。通常は年ごとに件数をまとめており、昨年1年間は計1777件で、1カ月当たり平均は148件だった。特定の月が多いといった傾向はなく、今年4月分は昨年の1カ月当たり平均とくらべれば3・8倍相当となる。
一方、渋谷署は覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の疑いで、イラン国籍で住居職業不詳のムサイ・モルテザ容疑者(44)を逮捕した。同容疑者は今年、コカインを使用したなどとして麻薬取締法違反(使用)容疑で逮捕され入管に移送されたが、4月28日に仮放免された。その後所在不明となり、警視庁が行方を追っていた。
渋谷署は仮放免された複数のイラン人が薬物の密売などを行っているとの情報を得て捜査。既に入管難民法違反容疑などで計5人を摘発した。
収容施設でのコロナ対策をめぐっては、海外渡航禁止で強制送還が進まない上、施設は3密(密閉・密集・密接)になりやすいため、法務省は「仮放免を積極的に活用する」と促し、5月にはガイドラインを策定した。その結果、昨年末時点で全国1054人だった収容者は7月3日時点で518人に半減した。