5日投開票の東京都知事選には過去最多の22人が立候補したが、その多くが大きな政党や組織の後ろ盾を持たない候補者だった。前回の都知事選では8割以上の候補者が一定以上の票を得られずに高額な供託金を没収されるなど、厳しい戦いを余儀なくされることも多い。なぜ「挑戦者」は後を絶たないのか。(小林佳恵)
諦めない
「公約を必ず達成する。そして都民の幸せを阻害する既得権益を断ち切る」
こう訴えた男性候補は、新橋駅前でのごみ拾いの活動を通じて知り合った50人以上のボランティア関係者らに支えられ、選挙戦を戦った。
供託金の一部もごみ拾い活動の関係者からの寄付を受けたといい、「『主要』としてメディアに取り上げられないことは想定していたが、奇跡を信じて当選を諦めるわけにはいかない」と強調する。
主要5候補ばかりに光が当たりがちだが、都知事選ではそれぞれの候補者が独自の戦いを繰り広げた。
別の男性候補は、政見放送で自身の主張を力説。公職選挙法の規定に抵触するとして音声を一部削除された箇所もあった。しかし、その奇抜さなどが会員制交流サイト(SNS)で話題となり、ツイッターの検索目印「#(ハッシュタグ)」を付けた自身の名前が、インターネット上で拡散した。
一方で、選挙公報に記載がないなど、有権者へアピールする場を活用しない候補者もいた。
新しい風
都知事選に立候補するには供託金300万円が必要で、有効投票総数の10分の1を下回ると没収される。21人が立候補した平成28年の前回都知事選の総得票数は約655万票。実に18人が没収ライン(約65万票)に届かず、供託金を没収された。
大きな組織を持たない候補者にとって、都知事選の没収ラインはかなりハードルが高いといえるが、なぜ挑戦するのか。
選挙コンサルティング「ジャッグジャパン」社長の大浜崎卓真氏は「首都・東京の首長選ということで注目度が高く、政治的な思想や信条を広く訴えられる場でもある」と指摘する。その上で「奇抜さは、主要とされる候補者に対抗するための選挙戦略ともいえる。全員が何かしらの政策を述べており、有権者は全員の政策を横並びで見比べるべきだ」とした。
ブランド・経営コンサルティングなどを行う「ワーク・アット」代表理事の上木原弘修氏は「注目度の高い都知事選で自分の考えを述べれば、一定層から共感を得ることができ、人脈が広がるといった効果も期待できるだろう」と分析。さらに若者の政治への関心や投票率の低さが問題となっている点に触れ、「さまざまな候補者が出るのは非常に良いことだ。若者が政治に関心を持ち、新しい風が吹くのではないか」と期待した。