「試行錯誤」の知事選が終わった。言うまでもなく新型コロナウイルスのためだ。選挙運動と、ウイルスの感染拡大防止策の両立を課せられた各候補が繰り広げた選挙戦は、「ウィズコロナ」時代の今後の選挙で何度も振り返られるものとなるだろう。
当選した小池百合子氏は街頭演説を一切行わず、オンライン中心の選挙に徹した。第一声から最後の訴えまで、インターネット上の動画配信で済ませる徹底ぶりだった。その中でも、会員制交流サイト(SNS)で「小池ゆりこに物申す」とした意見を募集し、動画で答えるなど、一方通行にならずに有権者の声を拾おうとする試みが見えた。
一方で、従来型の「どぶ板」運動を繰り広げる新人候補もいた。演説の際にはフェースシールドを着け、支援者たちとは握手ならぬ「肘タッチ」を交わすなど感染対策に配慮していたが、終盤になるにつれ、こうした対策がおろそかになった感は否めない。街頭演説会では大勢の人が密集し、「人との距離をとって」などと掲げたプラカードが掛け声倒れになる場面も少なくなかった。
オンラインでも「どぶ板」でも、有権者に訴えを届けたいという思いに変わりはない。しかし、仮に選挙運動で集団感染が起きた場合、候補者にはその「結果責任」を引き受ける覚悟が求められる。選挙という民主主義を担保する最大の仕組みを、ウィズコロナ時代にどう維持していくか。この問いが現場でむき出しになったことが、知事選の収穫の一つではないか。(大森貴弘)