さいたま市大宮区の繁華街「大宮南銀座」の複数のキャバクラ店で従業員らの新型コロナウイルス感染が相次ぎ、市が対応に腐心している。市は感染の封じ込めに注力する構えだが、キャバクラ店は利用客の匿名性が高く、濃厚接触者の洗い出しに苦慮しているのが実情だ。市が店名を公表しないケースをめぐり、「風評被害」に神経をとがらせる地元関係者も少なくない。
市は、大宮南銀座のキャバクラ店「クラブグランデ」で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したと認定し、店名を公表した。市によると、同店では6日午後5時時点で20人(従業員13人、客7人)の感染が明らかになり、大宮南銀座の別のキャバクラ1店舗でも感染判明が相次いでいる。
さいたま市はクラブグランデの従業員の検査をほぼ終えた。ただ、店に顧客リストがないため、利用者は特定し切れていない。6日午後4時時点で41人の利用客が自発的に相談を寄せてきたが、市は、連絡をためらっている人が他に多くいるとみている。
市は、キャバクラに出向いたことを知られたくない人に配慮し、感染が判明した場合も症状や感染経路の公表を一部制限する方針を決めた。他の感染者とは異なる「特別扱い」だが、市保健所の担当者は「一人でも多くの感染者を追うための苦肉の策だ」と話す。
店名の公表の可否も懸案となっている。
市は、クラブグランデに関し、6月26日に初めて従業員の感染が確認された際は店名を公表せず、クラスター発生を認定した同月29日に初めて明らかにした。大宮南銀座の別のキャバクラ1店舗については現在も店名公表を控えている。
市が大宮区内の商店街連合会などと合同で開いた6日の対策会議では、商店街側が、店名を非公表とすることによる「風評被害」への懸念を異口同音に唱えた。
「南銀座には(キャバクラ店以外の)通常の飲食店などもある。そういうところにまで影響がある」
「安全な店・業態について『リスクが少ない』と知らせる手法を検討してほしい」
清水勇人市長は会議後、感染者が相次いだ店舗に関し「客の把握ができなければ店名を公表する」との基準を記者団に示し、商店街側に理解を求める考えを強調した。(竹之内秀介、内田優作)