【ワシントン=黒瀬悦成】米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は7日、ワシントンの政策研究機関ハドソン研究所で講演し、中国が新型コロナウイルスの治療法やワクチン開発などをめぐり米国の医療機関や医薬品会社、新型コロナの研究を行っている学術機関に対してスパイ活動を展開していると指摘した。
レイ氏は、FBIが現在捜査している米国内の対外防諜事件約5千件のうち、「ほぼ半分が中国関連だ」と明らかにした。
また、米国内では約10時間ごとに中国絡みのスパイ事案が発生し、FBIが捜査に着手しているほか、過去10年間で中国に連なる経済スパイ事案が1300%も増えたと強調。こうした経済スパイは米国の知的財産に対する「最大の長期的な脅威だ」と警告した。
米国から盗んだ技術を中国で特許登録した上で、技術を盗んだ先の企業との合弁を持ち掛けるなどの不適切な行動が横行していることも紹介した。
中国が軍と民間のハッカーを使って米企業や米国民のデータをサイバー攻撃などで大量に収集し、スパイ活動への活用を図っているとも指摘した。
さらに、中国政府が「キツネ狩り」と称して、外国に住む中国政府の政策に批判的な反体制指導者や人権活動家を見つけ出し、中国に強制帰国させるなどの工作をしているとした。
中国が米政府の政策に影響を与えるための情報活動を展開しているとも指摘し、11月の大統領選に干渉してくる恐れがあるとして懸念を表明した。