【ワシントン=黒瀬悦成】ポンペオ米国務長官は9日、中国新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与したとして、自治区の行政トップを務める陳全国(ちん・ぜんこく)共産党委員会書記を含む自治区幹部3人およびその家族の査証(ビザ)発給を制限する制裁措置を発表した。トランプ米政権は、香港の「高度な自治」の擁護、チベット、新疆ウイグル自治区での人権保護や台湾の支援など、中国が「核心的利益」と主張する分野などで全面対決する意思を鮮明にし、制裁措置や非難声明を次々と繰り出している。
ポンペオ氏は9日の声明で「中国共産党体制による新疆の少数民族への人権侵害を座視しない」とし、「中国共産党による人権と基本的自由に対する攻撃への懸念を共有する全ての国が、共に中国の行動に対する非難の声を上げるよう求める」と強調した。
同氏によれば米政権は、トランプ大統領が先に成立させたウイグル人権法に基づき中国への圧力を強めていく方針だ。
また、ポンペオ氏は8日、中国の人権派弁護士らが2015年7月9日以降に一斉拘束された「709事件」に合わせて声明を発表。「事件の被害者の弁護人が秘密裁判で投獄されるなど、弾圧は続いている」と指摘し、「中国共産党は人権をめぐる国際的義務や、人権と基本的自由の保護に向けた国内の法的保証を尊重せよ」と訴えた。
さらに、ポンペオ氏は7日、米国人が中国チベット自治区を訪れるのを妨害した中国政府当局者へのビザの発給制限を発表した。
このビザ制限は、2018年に成立した「チベット相互入国法」に基づく措置。同氏は「中国政府による人権侵害を考慮すると、(外国人の)チベット訪問は地域の安定に不可欠だ」とし、米国はチベットの「意味のある自治」や宗教・文化的独自性を支持し続けると強調した。
トランプ政権は香港情勢をめぐり、中国が反体制活動家の取り締まり強化などを目的とする「香港国家安全維持法」を施行したのを受け、米国による香港に対する優遇措置を一部を除き全廃させる方針だ。