22日から始まる観光支援事業「Go To トラベル」で東京を発着の旅行は補助対象から除外されることになった。
東京では16、17日と新型コロナウイルスの新規感染者の報告が2日連続で過去最多を更新した。旅行を通じて地方に感染を拡大させないため、全国一律の運用を見直した政府の判断は当然といえる。
ただし感染者の増加傾向は東京以外の首都圏や大阪などでもみられている。こうした感染者の動向を見極め、今後も補助対象のあり方を機動的、恒常的に見直すなどの柔軟な対応が求められる。
「Go To トラベル」は1人1泊あたり2万円を上限に国内旅行代金の半額を補助する。赤羽一嘉国土交通相は17日の記者会見で東京発着の旅行を対象から除外したことについて「都内の観光業者や都民には期待があったと思う。安全対策上やむを得ないが、断腸の思いだ」と述べた。
政府は、22日から全国で事業を始める方針だった。
新型コロナウイルスの影響で観光地を訪れる旅行者が急減し、地方の観光産業が深刻な打撃を受けているからだ。開始時期を当初予定の8月上旬から前倒ししたのも、観光関連業者からの強い要望を受けたものだった。
だが感染拡大に歯止めがかからない中での旅行支援には地方自治体から懸念や反対の声が噴出し、与党内からも異論が出ていた。
全国知事会は近隣県からの誘客から事業を始めるなど、段階的な実施を求めている。すでにほとんどの道府県が利用者を県内や周辺に限定した独自の旅行割引制度を導入している。こうした自治体に対しても国が財政支援する仕組みも検討すべきだ。
新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済社会活動を両立させるには、柔軟できめ細かな対応が欠かせない。そのためには政府が情報共有を含めて地方と緊密に連携することが重要である。「東京除外」をめぐっては政府と都の間で意思の疎通を欠いた。大きな反省点である。
事業は開始時期も対象も方針が転換され、混乱を招いた。すでに東京から地方への旅行を予約した人も多い。今後も状況の変化によって変更はあり得る。予約キャンセルの補償やあり方などを検討し、政府は混乱の回避に全力を挙げねばならない。