「ポスト安倍」を目指す自民党の岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長が大阪府連との連携強化に乗り出している。大阪は独自の新型コロナウイルス対策などで注目される吉村洋文知事が副代表を務める日本維新の会の本拠地。次期総裁選を見据え、維新の勢いに戦々恐々とする府連を取り込みたい両氏の思惑も透ける。
■同じ日に会合参加
「しっかり関西・大阪の皆さまと力と心を合わせて努力をしていきたい」。岸田氏は17日、大阪市内のホテルで開かれた府連所属の国会議員や地方議員、経済界との会合でこう強調し、連携強化に意欲を示した。
会合は「新型コロナで疲弊する現場の声を聴いてもらう」(府連幹部)ために開かれたが、裏の目的は岸田氏と府連とのパイプづくりだ。衆院大阪15区選出で岸田派(宏池会)に所属する竹本直一IT政策担当相は「国のトップに立つ可能性が極めて高い」と派閥領袖の宣伝に躍起だった。
一方、石破氏も同日、東京・永田町の事務所からテレビ会議形式で府連組織との会合に参加。吉村氏の最近の活躍ぶりに触れつつ、「維新の力はすごいが、(大阪の自民党に)厳しい時こそ党として支援しなければならない」と述べ、維新旋風に直面する地元議員を勇気づけた。
参加者からは石破派(水月会)として新型コロナの提言をまとめ、政調会長を務める岸田氏へ提出を求める意見も挙がったという。
■官邸・維新の「蜜月」余波
両氏の府連への接近には、首相官邸と維新との「蜜月」も関係している。
大阪では憲法改正などで維新と歩調を合わせる安倍晋三首相や菅義偉官房長官に反感を抱く自民党関係者が少なくない。特に岸田派は大阪選出の国会議員を3人抱えており、維新人気を放置すれば総裁選に向けて遠心力が働きかねないことから、派幹部は「岸田氏の大阪入りの機会を増やしたい」と語る。
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一方、石破派に大阪選出の国会議員はいないが、首相と距離がある石破氏はこれまで官邸に対抗するかのように大阪を訪れ、府連との信頼関係を構築してきた。ある地元議員は「石破氏は集会に頻繁に来てくれるが、首相に近い岸田氏は選挙応援にはめったに来てくれない」と述べ、岸田氏を牽制する。
平成30年の総裁選で石破氏は大阪で「決起集会」を開いて1千人を超える聴衆を集めており、岸田氏は大阪での支持の掘り起こしが課題となりそうだ。
(永原慎吾、奥原慎平)