新型コロナウイルスの感染が収束するまでの時限的措置として、4月から解禁された医療機関の初診からのオンライン診療。日本医師会(日医)は受診履歴のない患者にまで認めることに抵抗したが、解禁にかねて前向きだった厚生労働相、加藤勝信は厚労省内の動きを押さえ込み、ゴーサインを出した。
6月29日にはオンライン診療を実施する川崎市内の病院を視察した。記者団には「オンラインか対面かというより、全体として病気になったときの対応力を上げるため活用するのが大事だ」と必要性を強調した。
オンライン診療の解禁は指導力を発揮したケースの一つだ。ただ、政府では調整力の方を買われることが多い。良くも悪くも自身をあまりアピールせず、地味なイメージがつきまとう。旧大蔵省出身とあって、役人気質との評も消えない。
5月に自民党本部で行われた厚労族による非公式の会合で、ある議員がこう苦言を呈した。
「あのコメントには違和感を覚えた」
やり玉に挙がったのは、同月8日の記者会見で語った、新型コロナウイルス感染症に関する保健所などへの相談・受診の目安に関する「誤解発言」だ。目安とは、厚労省が2月に提示した「37.5度以上の発熱が4日以上続く」を指す。野党は「目安のせいでPCR検査を受けられなかった人が多い」と批判した。
加藤は目安が相談や受診の基準のように捉えられたとして、「われわれから見れば誤解だ。幾度となく通知を出し、相談や受診は弾力的に対応してほしいと言ってきた」と釈明した。「誤解」という言葉からは通知内容が行き届かなかったことへの反省はうかがえず、世論の反発を招いた。
ここに加藤の弱点がある。手堅い手腕で答弁能力も高いとされるが、世間の受け止めより、政策の整合性に重きを置く役人的な感覚が顔をのぞかせる。