迷走「Go To」舞台裏 菅官房長官の巻き返しで東京のみ除外






 政府の観光支援事業「Go To トラベル」キャンペーンは、新型コロナウイルスの感染が再拡大している東京都発着の旅行を割引対象から除外したが、政府内では当初、神奈川、埼玉、千葉を加えた1都3県を除外する案も一時浮上した。しかし、政府内で観光振興の旗を振ってきた菅義偉(すが・よしひで)官房長官が中心となって巻き返し、最終的に除外対象は「東京のみ」となった。

 「仕方がない。東京都が外れると(経済)効果が落ちるが、安心感につながる」。安倍晋三首相は方針が決まった16日、周囲にこう語った。

 赤羽一嘉国土交通相が8月上旬を予定していた「Go To」事業の開始を今月22日に前倒しすると発表したのは10日。だが、東京都の新規感染者は9日に前日の約3倍の224人に跳ね上がり、以後も高水準が続いて隣県への感染拡大の兆候が見えていた。

 感染の再拡大が進む中での前倒しに対し、野党や都道府県知事、自治体からは、感染拡大を恐れ「コロナばらまきキャンペーン」「人災」などと事業の延期を求める声も高まった。

 政府関係者によると、「東京除外」が決まる前には、ほかにも意見があった。有力だったのが1都3県の対象からの除外だ。ホストクラブやキャバクラなど、接待を伴う「夜の街」飲食店の感染防止対策を1都3県で一体的に行ってきたことが背景にあり、首相や西村康稔経済再生担当相も理解を示していたという。延期論もあった。

 一方、菅氏は経済を重視する立場から東京も予定通り「Go To」の対象とするよう主張。ただ、政府高官は「強行すると公明党の赤羽氏が矢面に立つことになる。赤羽氏を傷つけてはいけないということで、見直しが必要だという空気になった」と振り返る。

 こうした中、東京都の小池百合子知事が都民に都外への不要不急の外出を自粛するよう要請し、「Go To」にも異論を唱えた。

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