【ワシントン=塩原永久】米国で雇用情勢の先行指標となる失業保険申請件数が約3カ月半ぶりに上昇に転じた。新型コロナウイルス流行が景気をさらに下押しし始めた恐れがある。トランプ政権は追加経済対策の策定を急いでいるが、政権と与党・共和党内で足並みが一致しない。ムニューシン財務長官は23日、トランプ米大統領が求める給与税減税が対策に盛り込まれないと明らかにした。
2017年に成立した法人税などの大型減税は、トランプ氏の看板政策となった。同氏はさらに、労使双方が支払う給与税引き下げを減税「第2弾」として主張。最近も景気浮揚に「重要だ」と述べ、追加対策に入れるよう訴えていた。
だが、追加策を策定するムニューシン氏は共和党上院指導部と会談し、23日、給与税減税は「盛り込まれない」と明言した。巨額の税収となる給与税に手を付ければ一段の財政悪化は必至で、与党内から反対の声が出ていたためだ。
政権はすでに3兆ドル規模の対策を実施した。共和党は追加対策を1兆ドル規模とする方向だが、野党・民主党は3兆ドル規模が必要だと主張しており、隔たりは大きい。その民主党と協議に入る前に、政権・与党内で調整が難航しており、与野党の本格協議は来週以降にずれ込む公算が大きくなった。
米労働省が23日発表した18日までの週の新たな失業保険申請件数は前週比10万9千件増の141万6千件と16週ぶりに増加。感染者が大幅に増え、営業規制を再実施する動きが広がった影響が出た可能性がある。
既存の経済対策のうち、消費を下支えした失業給付の増額は、今月末で失効する。景気支援策を切れ目なく実施するには、策定中の追加対策の早期成立が不可欠で、法案調整の難航は景気リスクになる。