トランプ米政権が覇権拡大を図る中国への対抗措置を強める中、中国が領有権を主張し軍事拠点を構築する南シナ海をめぐって米中の軍事的緊張が高まっている。今月上旬、中国が同海のパラセル(中国名・西沙)諸島周辺で軍事演習を実施すると、米海軍は空母2隻を同海に派遣し中国の主張を認めない姿勢を誇示した。ポンペオ米国務長官は23日の演説で自由主義国と連携して中国の脅威に対抗する姿勢を強く打ち出しており、同盟国の日豪なども対応を迫られている。
■米国防長官「中国に国際水域変える権利ない」
【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米政権は、南シナ海における中国の過剰な海洋権益の主張を否定し、その覇権的行動を封じ込めるため、歴代米政権よりもはるかに積極的に対抗措置を講じている。
エスパー国防長官が21日、英政策研究機関「国際戦略研究所」(IISS)の講演で明らかにしたところでは、米政権は中国が南シナ海を軍事拠点化して一帯の領有権を主張するのを容認しない立場を明確にするため、南シナ海に艦船を派遣する「航行の自由」作戦を昨年、過去40年間で最多となる頻度で実施した。
エスパー氏は米政権の南シナ海政策の目的について「地域の全ての国々の繁栄に向けて自由で開かれたインド太平洋(の理念)を擁護し、中国に対し国際水域を自国の海洋帝国に変える権利はないことを明確にするためだ」と強調した。
同氏はその上で、「今年も前年と同じ頻度で航行の自由作戦を実施していく」と表明し中国を牽制(けんせい)した。
米政権は13日、南シナ海をめぐる中国の主張は「根拠がない」とした2016年7月のオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判断を支持すると発表し、中国による南シナ海の実効支配の強化を拒絶する立場を公式に打ち出した。