米国の本格的な景気回復が遅れる懸念が浮上してきた。新型コロナウイルス流行の「第2波」到来が、経済活動や雇用の再失速を招いているとみられるためだ。4~6月期の実質国内総生産(GDP)は年率マイナス30%超の落ち込みが見込まれる。米政府と議会による追加経済対策の策定も遅れており、景気改善の重荷となっている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は29日、米国で感染拡大が「新たな段階に入った」と述べた。第1波の収束前に第2波が起き、感染者数は約440万人に達した。営業規制などの対策が各地で再開され、「経済活動を下押しし始めた」可能性があるとの見方を示した。
4月に失業率が14・7%で底を打ち、6月に11・1%まで改善した。だが、感染者急増に伴って、6月中旬以降は、クレジットカードの利用履歴や人々の移動記録など、経済活動を映し出す最新データに回復ペースの鈍化傾向が現れているという。
パウエル氏は、コロナ不況が「知る限りで最大の経済ショックだ」と強調し、悪影響が尾を引く事態に警戒感をにじませた。FRBは10~12月期も前年同期比マイナス6・5%の大幅な落ち込み予測しているが、同氏は、成長率や雇用改善が「減速する明白なリスクがある」として、「追加的な財政政策が決定的に重要だ」と指摘した。
トランプ米政権と与党・共和党は、計1兆ドル(約105兆円)規模の新たな経済対策の取りまとめを急いでいる。今月末に失業給付を週600ドル上積みする特例措置が期限切れになるため、月内の与野党合意を目指していたが、野党・民主党が3兆ドル規模の対策を求めており、与野党の協議は難航している。
これまで政府・議会が成立させた経済対策は計3兆ドルに達し、景気を下支えしてきた。失業給付の上積みをはじめ、対策が次々と失効する「財政の崖」への対処が遅れれば、消費の大幅な落ち込みや企業倒産の急増につながる恐れがあり、米景気は正念場を迎えた。(ワシントン 塩原永久)