熊本県など九州地方を中心に大きな被害が出た7月の豪雨災害では、高校球児やその家族も被災した。今も避難所で暮らす野球部員もいる中、熊本県高校野球連盟が独自に開催した大会で7月31日、甚大な被害に見舞われた人吉市にある県立高2校が対戦。球児たちは「自分のプレーで周りを明るくさせたい」との思いで懸命に白球を追った。(橘川玲奈)
31日午後、県営八代野球場(八代市)で行われた人吉高と球磨工業高の試合。人吉高が0-8で迎えた六回裏、1死一、二塁で打席に立った3年の尾崎龍馬さん(18)は粘って四球を選び、出塁した。後続の打者が右翼に犠飛を放ち、意地の1点をもぎ取る。だが逆転はならず、1-10(七回コールド)で惜敗した。
球場のスタンドで観戦した保護者らから、選手に惜しみない拍手が送られた。尾崎さんは「勝ちたかったけれど、大変な状況で野球ができてよかった」と振り返った。
7月4日の豪雨で球磨川が氾濫し、人吉市内は広範囲が浸水。県によると、同市では住宅約3780棟が床上浸水し、20人が濁流にのみ込まれるなどして命を落とした。両校の校舎やグラウンドに影響はなかったが、生徒の約1割が自宅の浸水などの被害を受けた。直後は授業が中止となり、野球部も練習ができない日々が続いた。