夏のボーナスと資産運用を象徴する日本の紙幣の束。投資戦略を検討する億り人のイメージ。
(一財)労務行政研究所の調査によると、2024年の夏のボーナス支給水準は前年比+3.8%の86万2928円に達する見込みです。この夏のボーナスを、資産1億円以上を築いた「億り人」たちはどのように活用するのでしょうか。本記事では、彼らが参議院与党大敗やトランプ関税合意といった国内外の政治経済情勢をどう見ているのか、そしてボーナスをどのように投資に回すのか、その具体的な戦略と注目銘柄について掘り下げていきます。激動する市場で、彼らはどのような投資判断を下すのでしょうか。
激動の市場:参院選とトランプ関税の影響
第27回参議院選挙では与党が大敗し、衆議院に続き参議院でも過半数割れとなりました。これにより国内政治情勢は不透明感を増しましたが、選挙結果が判明した翌日の株式市場は、驚くほど落ち着いた展開を見せました。
その後、トランプ関税合意の報道を受け、日経平均株価は急騰。6月末に一時4万円を超えて以降、7月に入ってからは3万9000円台後半で一進一退の動きが続いていましたが、ここにきて一気に動意づいた形です。海外に目を転じると、米国株は引き続き好調を維持し、主要株価指数は最高値圏をキープ。米ドル/円相場も150円台前半で推移しており、日本の株式市場を取り巻く環境は複雑ながらも、一定の安定を見せています。このような状況下で、経験豊富な「億り人」たちは株式市場をどう捉えているのでしょうか。
億り人たちが語る2024年後半の市場展望
長年の経験を持つ億り人たちは、現在の市場動向をどのように分析し、2024年後半に向けてどのような展望を抱いているのでしょうか。彼らの視点から、今後の市場の行方を読み解きます。
なのなの氏の見解:外国人投資家の買い越しと最高値更新の可能性
再現性の高い高配当株投資で知られる【なのなの】氏は、足元の株式市場を「米国の関税懸念があったにも関わらず、外国人投資家が15週連続で買い越すなど、思いのほか強い印象です」と指摘します。
さらに、2024年後半の相場展開については、「参院選後の政局動向や米国関税の内容が判明してくれば、目先の懸念材料払拭から、さらに上昇する可能性もあると思っています。場合によっては、2024年7月の日経平均最高値4万2224円を更新する場面もあるのではないでしょうか」と強気の姿勢を見せています。自身のポートフォリオについても、「高配当株中心、現金比率は10%以下」という構成で、従来とほとんど変化はないと述べており、現状の市場に対する確固たる自信が伺えます。
なごちょう氏の見解:好調維持とフルポジション戦略
徹底した分散投資と超長期投資を実践する名古屋の長期投資家、【なごちょう】氏は、現在の相場状況と今年後半の展望について、「非常に好調だと感じています。おかげさまで、私の証券口座は連日過去最高を更新しています」と語ります。
今後の見通しとしては、「今後は、アメリカの相場に引っ張られて乱高下することも予想されますが、年末に向かって上値を追っていく展開になると考えています」と楽観的な予測を示します。自身の投資スタンスについては、「私は基本的に、どんな相場にも株式のフルポジションで臨んでいます。通常通りの銘柄の入れ替えは継続しますが、相場の変化でそのスタンスを変えることはありません」と述べ、市場の変動に左右されない一貫した長期戦略を貫く姿勢を強調しています。
今夏のボーナスで億り人が選ぶ注目の銘柄
それでは、このように市場を見通す「なのなの」氏と「なごちょう」氏が、もし今夏のボーナスを新規投資に回すとしたら、どのような銘柄を選ぶのでしょうか。
なのなの氏が注目する市場材料と投資銘柄
高配当株投資のベテランである【なのなの】氏は、2008年以来17年連続で黒字を継続している実績を持つ投資家です。著書に『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える「爆配当」株投資』(KADOKAWA)があります。
【注目するマーケットの材料】
なのなの氏が特に注目しているのは、「親子上場解消TOB」「アクティビストの動向」「持ち合い株解消の動き」の3点です。これらは企業の資本効率改善やガバナンス強化の流れと密接に関連しており、株価に大きな影響を与える可能性があります。
【今夏のボーナスで投資したい銘柄】
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MS&ADインシュアランスグループホールディングス(銘柄コード8725):100株
国内損害保険業界のトップクラス企業。三井住友海上、あいおいニッセイ同和損害保険、三井ダイレクト損保などを傘下に持ち、三井住友海上あいおい生命や三井住友海上プライマリー生命といった生命保険会社も擁しています。海外事業展開にも積極的です。 -
伊藤忠エネクス(銘柄コード8133):200株
伊藤忠グループに属する燃料商社で、エネルギー系商社として国内トップシェアを誇ります。石油製品やLPガス、発電事業および電力販売、再生可能エネルギー事業、さらには日産車の販売まで、幅広い事業を手掛けています。 -
投資信託『大和−iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジあり)』:20万円程度
日本を除く先進国の株価動向を示す代表的な指数である「MSCIコクサイ・インデックス」に連動を目指す投資信託です。主に主要国の大型株および中型株に投資することで、国際的な分散投資を可能にします。
注目材料の解説:親子上場解消、アクティビスト、持ち合い株
なのなの氏が注目する上記の市場材料について、具体的な内容を解説します。
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親子上場解消:
親会社と子会社が共に株式を上場している状態を指します。近年、企業ガバナンスや資本効率の観点から懸念が指摘されています。例えば、親会社の利益が優先され、子会社の少数株主の利益が損なわれる「利益相反」や、子会社の独立した意思決定がされにくいといった問題が発生しやすいとされています。東京証券取引所は株式市場改革の一環として、親子上場企業に対し、少数株主保護の観点から情報開示の強化を求めています。これを受け、親会社が子会社に「TOB(株式公開買い付け)」を実施し、子会社の非公開化を進めるケースが顕著となっており、TOBの実施は一般的に株価の上昇要因となりやすいです。 -
アクティビストの動向:
「もの言う株主」とも呼ばれるアクティビストは、企業の経営陣に対し、株主価値向上のために様々な改革(例えば、資本効率の強化や事業再編など)を求める投資家のことです。彼らからの企業に対する圧力が高まっており、企業側も対応を迫られるケースが増えています。 -
持ち合い株解消:
企業同士が互いの株式を保有し合う慣習を指します。かつては安定株主確保や取引関係強化のために行われましたが、近年では資本効率の悪化や経営の透明性低下の原因と見なされています。そのため、資本効率の観点から、持ち合い株を解消する動きを進める企業が増加傾向にあります。
まとめ
今年の夏のボーナスを巡る「億り人」たちの動向からは、現在の株式市場に対する彼らの揺るぎない自信と、綿密に練られた投資戦略が明らかになりました。参院選後の政治的混乱やトランプ関税合意といった不確実な要素にもかかわらず、「なのなの」氏と「なごちょう」氏は共に市場の上昇を見込み、特に「なのなの」氏は日経平均の過去最高値更新の可能性まで示唆しています。
彼らの投資哲学は、高配当株への集中投資、徹底した分散投資、そしていかなる相場状況でもブレない超長期視点に特徴があります。また、新規投資先としては、親子上場解消やアクティビストの動向といった市場の構造変化を捉えた銘柄選定を行っており、単なる個別銘柄の優劣だけでなく、マクロな視点での投資機会を見出しています。
億り人たちの事例は、市場の短期的な変動に一喜一憂せず、自身の投資哲学に基づいた戦略を貫くことの重要性を示唆しています。彼らの見解と具体的な投資戦略は、今後の資産運用を考える上で貴重な示唆を与えてくれるでしょう。