自民党の国防部会・安全保障調査会が、専守防衛の下での新たなミサイル防衛策について、「相手領域内でも弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させる新たな取り組みが必要」とする提言をまとめた。
直接的表現を用いなかったが敵基地攻撃能力の保有を求めるものだ。党内手続きを経て、近く政府に提出する。
北朝鮮や中国は、日米のミサイル防衛網を突破しようと自国のミサイルの能力向上や増強に余念がない。ミサイルには核弾頭が搭載される恐れもある。
空からの脅威への備えはますます重要になっている。多様な守りの手立てをそろえておくことが効果的だ。今回の提言は、国民の生命と日本の平和を守る防衛力について、最大与党が真剣かつ冷静に検討した結果である。
政府は国家安全保障会議(NSC)で新たなミサイル防衛策などの議論を進め、9月中に方向性を示す。提言を踏まえ、敵基地攻撃能力の保有を決断すべきだ。
弾道ミサイルや巡航ミサイル、極超音速滑空兵器などは固定・移動式の発射台、航空機、水上艦船、潜水艦から発射される。侵略国の領域に位置するこれら発射プラットホームや軍用飛行場、軍港などをたたくことは、日本へのミサイル着弾防止につながる。
保有は憲法や専守防衛の原則に抵触し、周辺国の反発を招いて緊張を高めるとして反対する意見があるが、いずれも誤りだ。
座して死を待つわけにはいかない。他に手段がないとき、ミサイルなどの相手基地をたたく敵基地攻撃能力の行使は「法理的に自衛の範囲に含まれ可能」であり、専守防衛の原則に反しないというのが歴代内閣の立場である。
中朝両国は保有に反発しているが、日本を弱い立場のままにしておきたい思惑がある。日本における保有反対論は、国民の安全よりも侵略者の安全を優先する愚論そのものといえる。
提言は自衛隊が「盾」、米軍が「矛」という従来の役割分担を維持するとした。その役割の下でも今の日米防衛協力指針は、弾道ミサイル防衛の作戦を自衛隊が主体的に実施すると定めている。多様な任務を受け持つ米軍は日本の敵基地攻撃能力の段階的整備を歓迎するだろう。日米同盟の抑止力強化になることは明らかである。