
都心に暮らす人々の憩いの場、多摩川(東京・大田区)。ジョギングや散歩したり、家族や友人とピクニックやバーベキューを楽しんだりする人でいつも賑わっている。
そんな多摩川のある河川敷の片隅で、人知れず生きる猫たちがいる。
ほとんどが捨てられた猫とその子孫。20匹ほどが住み着いているという。
河原にポツンとペット用のキャリーケースが放置され、その近くで、見慣れない猫が怯えながら隠れている。そんな光景が、ここでは幾度となく繰り返されてきた。
雨上がりでジメジメとした河川敷の高架下を歩いていくと、ホームレスの住居の陰から、猫が一匹、二匹と姿を見せた。感染症だろうか。脇腹の皮膚が痛々しく腫れた猫や、目ヤニで目の周りが汚れた猫もいる。
地元の写真家・太田康介さんは10年ほど前から、こうした猫たちを保護する傍らで、彼らをカメラで追い続けてきた。
「写真を通して、猫たちがどういう状況で生きているかをちゃんと伝えたい。可愛いだけではないんだよ、と」
著書の写真エッセイ『おじさんと河原猫』には、必死に生き抜こうとするそんな猫たちの姿が記録されている。
多摩川に生きる猫たちの過酷な現実とは。
猫を虐待する人が絶えないため河川敷の具体的な場所は明かさないようにという条件で、太田さんと河川敷を訪れた。