1週間後に控える米大統領選で再選を目指すトランプ大統領の旗色は決して良くない。22日に行われた民主党のバイデン前副大統領との最後の討論会でも、トランプ氏は態勢の立て直しには成功したものの、目下の形勢を劇的に転換させるには至らなかった。
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トランプ氏は再選の望みを絶たれたのだろうか。
■圧倒的勢いの選挙活動
2016年の前回大統領選でトランプ氏が民主党のクリントン候補を相手に土壇場で逆転勝利を果たしたことなどを勘案すれば、真面目に選挙をウオッチしている研究者や記者であればあるほど、「バイデン氏勝利」を今の時点で断言できる者などいないはずだ。
他方、米国で選挙があるたびに一種の丁半ばくちで「共和党が勝つ」と主張し続ける一部の評論家の方々が唱えるほど、トランプ氏は勝利が約束された立場にいるわけではない。
それでも、道は険しいものの、トランプ氏の再選につながり得るファクターは存在する。
第1に、トランプ氏および陣営による圧倒的な勢いの選挙活動だ。
トランプ氏は24、25日の週末、南部フロリダなどの激戦州を含む6州を立て続けに遊説し、26日も東部ペンシルベニア州内の3カ所で大規模な支持者集会を行った。これに対し、加齢による老いが目立つバイデン氏は24日に同州で単発の集会を開いたのみだ。
また、トランプ陣営は250万人以上のボランティア運動員を動員して激戦州を中心に戸別訪問のローラー作戦を展開しているとされ、新型コロナウイルス危機を受けて最近まで戸別訪問に慎重だったバイデン陣営に差をつけている。
■ヒスパニック系を切り崩し
第2の要素は、トランプ陣営によればフロリダ州やペンシルベニア州で、投開票日が近づくにつれ共和党の有権者登録数が民主党の有権者登録数を上回っているとされることだ。
米国では投票の際に事前に有権者登録を行い、支持政党を申告する(無党派での申告も可)。登録有権者が必ず投票するわけではないが、有権者の動向を探る指標にはなる。
第3に、これまで民主党の支持基盤とされてきた黒人とヒスパニック(中南米系)の有権者について、トランプ陣営がこの4年間で着実に切り崩しを進めていることだ。
統計分析サイト「ファイブサーティーエイト」によると、18~44歳の黒人有権者のトランプ氏支持は16年の10%から今年9月現在で21%に上昇した。
中南米系でも45歳以下の有権者の支持は16年比13ポイント増の33%となっている。
■勝利の原動力は「隠れ支持者」
最後にもう一つ、トランプ氏が期待するのが、世論調査などでは世間の目を気にしてトランプ氏支持を公言しない「隠れトランプ支持者」による投票だ。
前回大統領選でのトランプ氏勝利の原動力となったと指摘されている「隠れ支持者」については、世論調査の専門家からは「ぎりぎりまで態度未定だった有権者が投票したに過ぎない」との見方もある。
しかし米国では現在、トランプ氏支持者が公共の場で暴行される事件が相次ぐなど、同氏への支持を公言しにくい空気が広がっているのも事実だ。
以上挙げた4点が選挙終了後、トランプ氏の「勝因」として語られることになるだろうか。答えは間もなく明らかになる。(ワシントン支局長)