
「トランプとバイデン、どちらが勝つと思うか」――。米大統領選を直前に控えた今、こう尋ねると、「トランプ」と答える人が、共和党、民主党、ともにはるかに多い。民主党支持者が圧倒的に多いニューヨークと、ペンシルベニア州アレンタウンで行われたトランプ支持者集会での、人々の声を伝えよう。■「バイデンに勝ってほしいが、勝つのは…」
「トランプとバイデン、どちらが勝つと思うか」
2020年10月26日、ペンシルベニア州アレンタウンで行われたトランプ氏の支持者集会で、参加者たちに聞いてみた。
当然のように、ほぼすべての人が、「トランプが勝つ」と断言した。しかもその多くは、「圧勝する」「当然だ」「疑いの余地もない」と自信満々だった。 一方、同じ質問を大統領選前最後の週末、民主党支持者が圧倒的に多いマンハッタンでしてみた。
4年前の大統領選で、ニューヨーク市では19%の人がトランプ氏に投票した。マンハッタンに限れば、わずか10%だった。
ほとんどの人が「I hope(バイデンが勝ってほしい)」という言い方をする。
しかし、「あなたが勝ってほしいのはバイデンだとわかったけれど、勝つと思うのはどっち?」と聞き直すと、「トランプ」と答える人がほとんどだった。 「わからない」と答えた人もいるが、「バイデン」と自信をもって答えた人はごくわずかだった。
■「世論調査もマスコミも、もう信じていない」
ニューヨークのセントラルパークの南にトランプ氏が所有する「トランプ・パーク」と呼ばれるコンドミニアムがある。その前に立っていた50代くらいの女性に聞いてみた。このトランプ所有のビルに住み、裕福そうだから、トランプ支持者かもしれない。
「バイデンに勝ってほしいわよ。このビルの名前から『トランプ』を削除する運動をしている」という。
「4年前にどれほど驚き、ショックだったことか。ヒラリーが勝つって、何の疑いもなかったんだから。ニューヨークは翌日、お通夜みたいだったわ」
「世論調査もマスコミも、バイデン優勢と伝えているけれど」と振ってみると、「世論調査もマスコミも、もう信じていないわ。4年前だって、選挙寸前まで、ヒラリー優勢だって言っていた。世論調査やマスコミを信じ切っていたから、痛い目にあったのよ」
そして、「残念だけど、トランプが勝つ気がする。トランプ支持層は厚いわ。コロナでこれだけ死者が出ても、彼らはトランプのせいだと思っていない」と言う。
地下鉄のホームを清掃していた30代くらいの黒人女性にも、同じ質問をしてみた。
「どっちが大統領になっても、黒人のために何かしてくれるわけじゃない。バイデンになったら、税金が上がると思って、トランプにするっていう人もいる。私はバイデンも好きじゃないけど、どっちか選ばなきゃならないから、2人の悪人のうちのまだましな方、バイデンに投票するわ」
「勝つのは?」と聞くと、やはり迷わず「トランプ」と答えた。
それでも、マンハッタンのマジソンスクエアガーデンで期日前投票するために並んでいた人たち10人ほどに聞くと、「トランプに投票する」と答えたのは、男性1人だけ。あとは皆、バイデン氏だった。
チャイナタウンで土産店を経営するインド系アメリカ人(30代)など、自分でビジネスをしている人の中には、トランプ氏を支持する人も少なくない。 そして、ニューヨーク市クイーンズ区の高級住宅地で話した人たちにも、トランプ支持者が半数以上いた。
この日はハロウィーン(10月31日)だった。コロナ感染予防のために、キャンディを2メートルくらいの筒の中に入れて下に落とし、子供たちにあげていた家族が2組いた。1組はトランプ支持、もう1組はバイデン支持だった。
そこですれ違った公立校の副校長だという女性に、「トランプを支持するか」と聞くと、「私の母親は支持者よ」と答える。自分の意見は避けてそう答える人は、たいてい「隠れトランプ」で、彼女もそうだと認めた。
「でももちろん、学校ではそんな話はできないわ」と言う。
女性も含め、この地域で話したトランプ支持者らも皆、「トランプが勝つ」と答えた。