死刑制度の廃止を目指すとした日本弁護士連合会の宣言が会の目的を逸脱しているとして、京都弁護士会(京弁)の南出喜久治(きくぢ)弁護士が16日にも、日弁連などを相手に宣言の無効確認を求め、京都地裁に提訴することが分かった。個人で見解が異なる死刑制度の宣言案採択。「日弁連は政治や思想に関して中立であるべきで、目的外の行為だ」と訴えている。
【写真】「2020年までに死刑制度廃止を目指す」との宣言案が採択された人権擁護大会
日弁連は平成28年の人権擁護大会で、「2020(令和2)年までに死刑制度廃止を目指す」との宣言案を賛成多数で採択。平成16年には死刑執行停止法制定を求める決議を出している。
訴状によると、死刑制度に対する考え方は会員それぞれで異なり、日弁連が多数決で決める事柄ではないと指摘。宣言や決議は無効だとしている。
また京弁は24年、死刑廃止の決議案を反対多数で否決。だが、事実経過をホームページ(HP)で公表せず、死刑廃止を求める会長声明を掲載し続けている。
南出氏は「死刑の是非を多数決で無理やり決議するのは個人の思想弾圧だ」と主張し、HP上から宣言や声明の削除も求める。
日弁連は弁護士法に基づき、単位弁護士会と呼ばれる都道府県組織の監督などを目的に設置。弁護士は日弁連への登録と各弁護士会への加入が義務で、脱退すれば業務ができない。
登録や加入を続けざるを得ないという国の制度のもとで精神的苦痛を受けたとして、宣言の無効などが確認されない場合、国と日弁連、京弁にそれぞれ50万円の損害賠償も求める。
日弁連は産経新聞の取材に対し、「死刑制度は政治的な問題ではなく、国家による最大の人権侵害。決議や宣言は、基本的人権の擁護などを掲げる会の目的から逸脱していない」と回答している。