日米15%関税合意の波紋:日本経済と米中貿易への影響を解説

日本時間23日、ドナルド・トランプ前大統領が自身のSNSに、日本との間で相互関税を15%とすることで合意したと投稿し、その詳細が徐々に明らかになっています。この日米間の新たな貿易合意は、日本経済にどのような影響を与え、また世界、特に米中間の貿易交渉にどのようなメッセージを送るのでしょうか。

日米貿易交渉の進展を示す場面:トランプ前大統領と日本関係者日米貿易交渉の進展を示す場面:トランプ前大統領と日本関係者

日米関税合意の具体的内容と日本経済への影響

今回の合意の詳細を見ると、日本が米国に約80兆円を投資することや、コメの市場開放において「ミニマムアクセス米」の枠内で米国からの輸入割合を増やすことが含まれています。

ジャーナリストで千葉大学客員教授の高口康太氏は、この合意を「日本がうまくやった部分が大きい」と評価しています。特に、米国が25%と主張していた自動車関税を15%まで引き下げられた点は、日本の主要産業にとって極めて重要です。これは、対米輸出を行う他の国のメーカーと比較しても、日本が比較的有利な交渉結果を得たことを示唆します。しかし、高口氏は、この合意が日本のGDPに押し下げ圧力を与えることは避けられないだろうと指摘しています。

米中貿易交渉への波及効果と中国の反応

この日米合意は、中国に重要なメッセージとなります。対米輸出において日本と競合する部分が大きい中国は、今回の15%という関税率を自国の交渉におけるターゲットの一つと設定するでしょう。

高口氏は、中国が日本と同じ15%を実現するのは相当ハードルが高いとの見解を示しています。既にフェンタニル関連で20%の関税が課され、日中関係が日米関係ほど良好ではないためです。それでも中国側は、今回の15%という数字を、自国の競争力を維持するための「一つの標準」として受け止めるだろうと予測されています。

トランプ氏の外交戦略と今後の米中関係

今後の米中交渉では、中国のレアアース供給力などの「強力な武器」と、米国の対抗策がぶつかり合うことが予想されます。現在の米中協議は、重要物資の完全な輸出禁止を避ける方向で進められていますが、具体的な関税率の詰めに際し、日本の交渉結果が中国にとっての「参考基準」となる可能性が高いと分析されています。

トランプ前大統領が中国訪問の可能性に言及している点について、高口氏は、トランプ氏が得意とする首脳会談を通じた交渉スタイルに注目します。しかし、中国側が、今後明らかになる関税率や他国との合意内容に不満を持つ場合、首脳会談の実現は難しいだろうという見方を示しています。

結論

今回の「日米15%関税合意」は、日本経済に一定の影響を与えつつも、主要産業にとっては有利な側面を持つ可能性があります。同時に、この合意は国際貿易秩序、特に米中貿易摩擦において、中国が今後の交渉で目指す新たな基準点を提供する役割を果たすことになります。その多岐にわたる影響は、引き続き注視されるでしょう。

参考文献

  • ABEMA TIMES