米大統領選で野党・民主党のジョー・バイデン氏(77)の当選が確実となった中、ドナルド・トランプ大統領(74)は15日、「彼(バイデン氏)が勝ったのは、選挙で不正があったからだ」と、バイデン氏の勝利を認めるとも受け取れるツイートをした。しかし直後に、負けは認めないとの主張を改めて強調した。
トランプ氏はこの日のツイートで、3日に投票が行われた大統領選で不正があったと、証明されていない主張を繰り返し、「彼(バイデン氏)が勝ったのは、選挙で不正があったからだ」と書き込んだ。
約1時間後には、選挙での負けは認めないと主張した。
米ツイッター社は15日、選挙での不正行為を主張するトランプ氏のツイートの上に「選挙の不正に関する主張は真偽が問われている」との警告をかぶせた。
トランプ氏は選挙で広範囲に及ぶ不正行為があったと根拠を示さずに主張し、選挙の勝敗を左右し得る複数の重要州で訴訟を連発している。
裁判所が訴えを棄却したり、トランプ陣営側が訴えを取り下げたりするなど、今のところ法廷闘争は成功していない。
米連邦選挙当局は12日、今回の大統領選は「アメリカ史上最も安全」な選挙で、「投票システムが票を削除したり、紛失したり、変更を加えたり、あるいは何らかの方法で不正アクセスを受けたといった証拠はない」との調査結果を発表した。
バイデン氏が獲得する選挙人は計306人となり、大統領に当選するために必要な過半数270人以上を大きく上回っている。
票の再集計や法廷闘争で大勢が変わる見通しはなく、バイデン氏が次期大統領であることに変わりはない。
全国での得票数でも、バイデン氏が500万票以上リードしている。
それにもかかわらず、トランプ氏はこれまでバイデン氏の勝利を認めていない。
トランプ氏は13日の記者会見で、将来どちらの政権になるのか「誰にも分からない」と述べた。
■政権移行プロセスが停滞
トランプ氏が敗北を認めないことで、拡大する新型コロナウイルスの感染症COVID-19をめぐる米政府の対処能力に対して懸念が高まっている。
また、来年1月20日の大統領就任式を控える中、新政権への移行プロセスが停滞している。
トランプ政権の下で政権移行プロセスの開始を担う一般調達局(GSA)は、バイデン氏とカマラ・ハリス氏の勝利を認めていない。
バイデン陣営は円滑な政権移行に必要な機密情報や連邦政府機関、連邦予算などを活用できない状況が続いている。
11日にバイデン氏の首席補佐官に起用されることが明らかになったロン・クレイン氏は15日、米NBCに対し、新型ウイルスのパンデミックへの対応に注力できるよう、政権移行のプロセスを今週中に開始する必要があると述べた。
アメリカは現在、パンデミックが始まって以降で最悪の感染状況に見舞われている。13日には新たに18万人以上の感染と、1400人の死亡が確認された。同国の累計感染者数と死者数は世界最多となっている。
「ジョー・バイデンは現在進行中の危機的状況下で合衆国大統領になる」とクレイン氏は述べた。「シームレスな政権移行でなければならない」。
米政府の新型ウイルス対策に大きくかかわってきた米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士は、政権移行が直ちに始まるほうが公衆衛生にとっていいことだと述べた。
クレイン氏は「ドナルド・トランプのツイートが、ジョー・バイデンが大統領になるかならないかを決めるのではない」、「アメリカ国民がそう決めたんだ」と述べ、トランプ氏の直近のツイート内容を一蹴した。
■ワシントンでトランプ氏支持者が大規模デモ
ワシントンでは14日、選挙で不正があったと主張するトランプ氏を支持する人々が多数集結し、デモ行進を行った。
星条旗を手にしたデモ隊には白人至上主義団体「プラウド・ボーイズ」や、「オウス・キーパーズ」(誓いを守る人々の意)を含む複数の極右グループメンバーが加わった。ヘルメットや防弾チョッキを身につけている人もいた。
デモの大部分は平和的に行われたものの、夜になるとトランプ氏支持者と反対派が小競り合いを起こすなど、一部で暴力的になった。
当局によると、暴力行為や武器の所持など、様々な容疑で20人が逮捕された。刃物で刺されたとの報告もあったという。警官2人も負傷した。
(英語記事 Trump says Biden won but again refuses to concede)