ストーカー規制法による禁止命令が平成29年から大幅に増加し、直近3年間で約8倍に急増していることが22日、分かった。改正法が29年に施行され、違反すると懲役刑を含む罰則がある禁止命令を警告なしに出せるようになり、厳罰化の流れが加速したことが要因とみられる。一方、相談や摘発の件数は減少に転じていることも判明した。警察庁は「厳罰化の流れで抑止力が働いた」とみている。ストーカー規制法は24日で施行から20年を迎える。
【表】ストーカー規制法の対象行為の拡大の経緯
ストーカー規制法は、桶川ストーカー殺人事件(11年)を契機に12年に制定された。ただ、その後も法の規制から外れた形態の事件は後を絶たず、2度にわたり法改正が行われた。
東京都小金井市でアイドル活動をしていた女子大生がファンの男に刃物で襲われた事件(28年)を受けた29年の改正法施行で、会員制交流サイト(SNS)の執拗(しつよう)な書き込みも「つきまとい」行為に認定され、緊急時には警告なしに禁止命令を出せるようになった。
改正を受け、全国の警察による禁止命令の件数は激増。警察庁によると、改正法施行前の28年は173件だったが、29年は662件、30年は1157件となった。令和元年は1375件に達し3年間で約8倍に増えた。
一方で、ストーカー事案の相談件数は増加傾向が続き平成29年には2万3079件と過去最多を記録。だが、30年は2万1556件で、令和元年も2万912件と減少傾向に転じた。
また、ストーカー規制法の摘発件数も平成29年は926件だったが、30年は870件、令和元年は864件で2年連続減少した。
警察庁の担当者は「警告なしに禁止命令を発出できるようになったことで行為がエスカレートして最悪の事態を招く前に対応できている」と推察。「(改正による厳罰化の流れで)『この行為は犯罪である』とした規範意識も高まったとみられ、統計にも効果が出ている」と話している。