【ソウル=建石剛】「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」訴訟問題を巡り、韓国大法院(最高裁)で三菱重工業への賠償を命じた判決が確定してから29日で2年となる。被告企業の資産を賠償に充てる「現金化」に至るまでには、手続きになお時間がかかる見通しだ。韓国政府はこの間に、賠償に応じる姿勢を見せない日本側から、何らかの譲歩を引き出したい考えだ。
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戦時中に日本に動員された元女子勤労挺身(ていしん)隊員ら5人が三菱重工を相手取った訴訟は、大法院で2018年11月、三菱重工に1人当たり1億~1億5000万ウォン(約940万~1410万円)の賠償を命じた判決が確定した。日本政府は1965年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みと反発し、三菱重工は賠償に応じない構えを示した。
死亡した1人を除く原告4人は2019年3月、裁判所に三菱重工の資産差し押さえを申請し、商標権2件と特許権6件の計約8億400万ウォン(約7580万円)相当を差し押さえた。
日本政府は訴訟関連書類の送達を拒否している。書類の不達で訴訟が滞ったため、裁判所は今年9~10月、一定期間ホームページに掲示することで当事者に届いたとみなす「公示送達」の手続きを取った。これにより、資産売却に対する三菱重工側の意見を聞く「審問」は11月に行われたものとみなされた。12月30日には、差し押さえ命令の決定も通知されたこととなる。
次の焦点は、差し押さえた資産の売却命令に移る。原告4人は19年7月に資産売却命令を申請した。ただ、命令が出たとしても、現金化までには手続きがある。
正式な鑑定で、商標権と特許権の価値を確定させる必要がある。地元弁護士によると、地裁が認定した鑑定人が競売での最低価格を決めるという。
三菱重工が不服として即時抗告すれば、抗告審で手続きの適正性が審理されることになる。全ての手続きが終わり、資産が競売にかけられ、買い手が付けば、現金化に至ることになる。