クーパンのキム・ボムソク議長
「クーパンの目標は2025年までに韓国に5万件の新しい雇用を創出することだ」。クーパンのキム・ボムソク取締役会議長(43)の言葉だ。クーパンは12日、米国証券取引委員会(SEC)にニューヨーク証券取引所上場のための申告書を提出した。
キム議長はSEC申告書で新規雇用5万件という目標を提示した。現在クーパンの職員は4万人、間接雇用まで合わせると5万人水準だ。ウォールストリートジャーナルやロイター通信は匿名の関係者を引用し、クーパンが上場のための企業公開(IPO)で500億ドル(約55兆ウォン、約5兆2300億円)前後の価値が認められることを目標にすると伝えた。
キム議長はクーパンをニューヨーク株式市場に上場しながら強力な経営権防御手段の「差別的議決権」を持つ。SECに提出した申告書によると、クーパンはキム議長が保有する株式(クラスB)に対して1株あたり29倍の議決権を付与する。クーパンを上場した後、キム議長が持ち株比率2%だけ保有しても、株主総会では58%水準の議決権を行使できるということだ。2019年末基準でクーパンLLC(有限責任会社)はクーパン株100%を保有している。
クーパンの累積赤字は昨年末基準で41億1800万ドルにのぼる。こうした状況でクーパンが国内証券市場の上場要件を満たすのは難しい。差別的議決権もクーパンが米国行きを選択した重要な理由に挙げることができる。匿名を求めた証券業界の関係者は「ニューヨーク証券市場は全世界投資金の70%が集まる市場」とし「大規模な投資を誘致するには韓国より米国が有利」と説明した。キム議長は事業初期から海外投資誘致の必要性を強調してきた。キム議長は2012年のインタビューで、「中国のバイドゥ・Youku・アリババが米国の投資金の力を借りて大きくなった会社」とし「このような資金を韓国に引き込んで世界に立つ競争力がある会社を育てるのがよい」と主張した。
キム議長は大企業の駐在員だった父のため幼時期を主に海外で過ごした。中学生だった1994年に米国に定着した後、米国国籍を取得した。ハーバード大政治学科で勉強していた当時、『カレント』という雑誌を創刊し、ニューズウィークに売却した。2010年に韓国に戻って資本金30億ウォンでクーパンを設立した。当時米国で人気だったオンライン共同購入方式「グルーポン」を見て、自営業者が多い韓国にも似たサービスを導入すれば成功すると期待したという。
キム議長は2013年、フォワードベンチャーズという会社を設立し、後にクーパンに社名を変更した。その後の8年間、赤字を免れなかったが、売上高は急速に増加した。2014年には「ロケット配送」を公開し、2015年には売上高1兆ウォンを超えた。昨年の売上高(連結財務諸表基準)は120億ドル(約13兆ウォン)にのぼる。2019年(7兆1500億ウォン)に比べ80%以上も増えた。2018年に1兆1300億ウォンだった営業赤字は昨年5億ドル(約5500億ウォン)に減少した。
過去3カ月間にクーパンで1つ以上の商品を購入した顧客は1485万人(昨年末基準)にのぼる。2年間に60%以上増えた。デパート1位のロッテ百貨店の顧客数(昨年837万人)より多かった。一度クーパンを利用した顧客は購買金額を増やしていくとクーパンは説明する。2016年にクーパンで100万ウォンを使用した顧客は昨年359万ウォン使ったという。ロケット配送による「ロックイン」(囲い込み効果)戦略が通用したという説明だ。
キム議長は2015年の記者懇談会で「(ロケット配送は)全世界で唯一のサービスであり、赤字・黒字はともかく、クーパンがこうしたサービスを提供できるということ自体が幸運」と話した。2016年の中央日報とのインタビューでは「クーパンは情報技術(IT)会社」と語った。現在クーパンのIT開発者は約2000人。中国上海と米シリコンバレーなどでソフトウェアを開発する。
孫正義会長が率いるソフトバンクグループは2015年に10億ドルをクーパンに投資した。当時、キム議長は「今は赤字でもソフトバンクの投資金など『実弾』があるため、未来を眺めて投資することができる」と語った。「私が持つものは夢と根拠のない自信だけだった。そこからすべてのことが始まった」という孫会長の言葉をキム議長は胸に刻んで世界的な企業家を夢見たという。キム議長は2016年の中央日報のインタビューで「(ソフトバンクの投資は)経営への干渉も、どう使うべきという条件も全くない」と紹介した。孫会長は2018年、追加で20億ドルをクーパンに投資し、キム議長への信頼を表した。
キム議長は昨年、給与として88万ドル(約10億ウォン)を受けた。ストックオプション(新株予約権)を含めると昨年1434万ドル(約160億ウォン)となる。クーパンのニューヨーク証券市場上場は4月ごろと予想される。クーパンは1000億ウォンほどの株式を職員に分けると明らかにした。キム議長はSEC申告書で「昨年多くの企業が雇用を減らした中、自社は約1兆ウォンを投資して7カ所の新しい広域物流センターを設置し、数千人の雇用を創出すると発表した。ソウルのほか、新しいインフラと雇用を創出するために数兆ウォンを投資する予定」と伝えた。