東京都は12月15日、恩賜上野動物園で飼育されている2001年生まれの双子のジャイアントパンダ、シャオシャオ（オス）とレイレイ（メス）を、中国側との協定に基づき来年1月末に中国へ返還すると発表しました。現在、日本にいるジャイアントパンダはこの2頭のみであり、今回のパンダ返還が実現すれば、1972年に上野動物園に初めてパンダが来て以来54年ぶりに日本からパンダがいなくなることになります。日中関係の悪化が続く中、中国が今後日本に新たなパンダを貸し出す見通しは低く、当分の間、生身のパンダを見る機会が失われる可能性が高まっています。
上野動物園のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイ
上野動物園のパンダと「パンダプロジェクト」の歴史
シャオシャオとレイレイは、昨年9月に中国へ返還されたリーリーとシンシンの子どもで、上野動物園で生まれました。現在、この2頭は「中国野生動物保護協会」と日本側が共同で繁殖研究を行う「パンダプロジェクト」の一環として、有償で日本に貸し出される形を取っています。その貸与金額は非公開とされています。
上野動物園のパンダの歴史は、日中両国の国交が正常化した1972年に、中国政府からランラン（メス）とカンカン（オス）が贈呈されたことに始まります。その後、貸与方式へと変わりましたが、来園者たちは途切れることなくパンダとの出会いを楽しんできました。
新たなパンダ貸与の不透明性と日中関係
シャオシャオとレイレイの貸与期限は来年2月でしたが、検疫の問題もあり、返還が前倒しされました。問題となっているのは、交代となる新たなパンダの来園が見込まれないことです。
担当の東京都公園緑地課は、「中国野生動物保護協会には『今後もこのパンダプロジェクトを継続していきたいと思ってます』と伝えています。国を経由して何か伝えているということは特に承知していないですが、協会には（こちらの意向は）伝わっています」と述べていますが、現状、中国側からの正式な回答は得られていません。
しかし、中国側は直接的な回答こそ避けているものの、高市早苗首相の台湾有事に関する発言から始まった日中間の緊張激化を、パンダの貸与中断に結びつける意図を隠していません。高市首相の発言から12日後の11月19日、北京市共産党委員会機関紙である北京日報は、中国の対日政策研究者が「日中間の緊張が続けば、中国が日本に新たなパンダを貸与することは恐らくないだろう」「日本はパンダがいなくなる状況に直面する」と発言したと報じています。
全国紙外報部記者は「今年4月に超党派の日中友好議員連盟が訪中した際、パンダの新規貸与を中国側に求めています。当時中国外交部は『日本が中国の保護事業を支持することを歓迎する』と表明しており、パンダを巡る態度は高市首相発言を機に180度変わってしまったようです」と指摘しています。
結論
今回のシャオシャオとレイレイの返還、そして新たなパンダの貸与が見送られる可能性は、単なる動物園の話題に留まらず、悪化する日中関係の現状を象徴する出来事と言えるでしょう。かつては友好の証として日本に贈られ、多くの人々に愛されてきたパンダが、政治的な緊張のあおりを受ける形となりました。今後、日本に再びパンダがやってくるには、両国間の関係改善が不可欠であると考えられます。
