バイデン氏、就任から100日の世界戦略 その裏にある本旨は

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大統領就任から100日を迎えたバイデン氏。その外交戦略が見据えるものとは/BRENDAN SMIALOWSKI/AFP/AFP via Getty Images

大統領就任から100日を迎えたバイデン氏。その外交戦略が見据えるものとは/BRENDAN SMIALOWSKI/AFP/AFP via Getty Images

(CNN) 100日あればかなりのことができる。たとえばフランス語の勉強を始める、愛犬の訓練、10キロ走に出場する準備など。しかし1つできないことがある。残酷で容赦のない世界の変革だ。

バイデン米政権の最初の100日間から判断して、それが実現する心配はない。そもそも100日という区切りで大統領の実績を判断するなど非現実的で無理な話である。

筆者は6つの政権で働いた経歴を持つ。共和党の時も民主党の時もあったが、どの政権であれ外交政策の優先課題が内政の課題とそれを突き動かす政局によってここまで強い影響を受けたと思われるケースはただの一度も見られなかった。

このパターンが今後も続くかどうかはわからない。しかし、バイデン大統領のこれまでの主要な指示は驚くほど明快だ。すなわち国内では変化をもたらす指導者に、そして国外では賢く、慎重なリーダーとなるのを目指している。

国家の立て直しは必須

誇張ではなく、バイデン氏は国家の復興という極めて重大な課題に直面している。フランクリン・ルーズベルト以降の大統領が向き合う中で最大の課題だが、当時のように世界大戦のおかげで国内的にも対外的にも米国の強さが増していた状況ではない。統治はまさに選択にほかならず、その意味でバイデン氏は極めて明瞭に自身の最優先課題を提示している。つまり新型コロナウイルス対策、気候問題への対処、経済の回復、人種の平等に向けた努力だ。

そして、同政権の外交政策が国内問題から始まることについていくらかでも懐疑的な見方はあったにせよ、3月にブリンケン国務長官が示した外交課題は事実上、国内の優先事項と結びついた問題に注力するものだった。すなわち移民、民主主義の回復、気候問題、新型コロナウイルスである。

とはいえ、バイデン氏が世界における米国の役割を無視しようとしているわけではまったくない。

上院議員を40年近く、副大統領を8年務めた政治家として、バイデン氏は政治的資本を浪費しないことの重要性を敏感に察知する。とりわけ上下両院の議席数が現在ほど拮抗(きっこう)している状況ではそうだ。あるいは国内の政局をかき乱すことで、自身の期待する革新的な内政課題が台無しになる恐れについても認識している。

バイデン氏と同氏の外交政策チームはまた、米国の外交政策が米国民と関連するものになるように努めている。さらにその手法が中間層に恩恵をもたらす外交政策となるようにしている。

同氏の外交政策的措置の多くは、たとえば1915~23年のアルメニア人の大量殺害に対する「ジェノサイド(集団虐殺)」の認定から、対中強硬策として中国政府のウイグル迫害や香港での民主派弾圧に対し人権侵害との声を上げたことまで、政治的に評判を呼んでいる。また少なくとも議会からあまり支持を得ていないような政策に関しては、ここまでかなり慎重に進めている。たとえばイラン核合意への復帰については同国の制裁解除の要求に従うのを拒否し、復帰後により長期的かつ強力な合意を成立させることを約束する。

政治的な対立に直面すると、バイデン氏はすぐに引き下がってきた。難民受け入れ枠の拡大という選挙公約を撤回したように見えた時がそうだった。ただそのことで同氏を責められるだろうか? 1946年以降、現職大統領の党が最初の中間選挙で失う議席数の平均は25議席に上る。下院でかろうじて過半数を取り、上院での優位も1議席のみという現状では、バイデン氏に下手な政治的判断を下せる余地などほとんど残されていない。

容易に達成できる目標が奏功、今のところは

1つや2つの例外は以下で論じるとして、バイデン氏の就任後100日間の外交政策は、当然のことながら警戒心と慎重さ、リスク回避の姿勢に特徴づけられている。同氏がオバマ政権の副大統領だったころより、世界はずっと複雑で非友好的だ。上院外交委員会の委員長時代と比べれば確実にそうだ。そして国内に難題を抱える状況から、バイデン氏は前任者が棄損した米国のイメージと信用の回復におおむね自分の仕事を限定してきた。それらの大半は行政措置と命令によって行われた。

これには、主にイスラム教徒が多数派の国々を標的にした渡航禁止の撤回や世界保健機関(WHO)とパリ協定への復帰、米ロ間の主要軍縮条約である新戦略兵器削減条約(新START)の延長が含まれる。これらはすべて外交における米国の信用、多国間協調主義、世界でのリーダーシップを取り戻すための取り組みだ。

大統領に就任したトランプ氏が最初に訪れた2カ国はサウジアラビアとイスラエルだが、これは従来の伝統にそぐわないものだった。今年6月、バイデン氏は英国を訪問して主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)に出席。その後ベルギーで北大西洋条約機構(NATO)のサミットにも参加する予定だ。米国の伝統的な同盟国や国益を重視する姿勢がそこに表れている。

世界を仕切るも、変革はせず

バイデン氏のここまでの行動で最もリスクが高いのは、今年の9月11日を期限としてアフガニスタンから米軍を撤退させると発表したことだが、この問題について米国民は関心を失っているように思える。ここでの主要なリスクは、米国の対テロ能力が低下して米大陸への攻撃阻止に支障をきたすというものだが、仮に実体化するとしても何年も先のことになりそうだ。

バイデン氏はまた、米国としてかなり大胆な目標を設定し、温室効果ガスの排出を2030年までに半減するとした。この期限内での達成は極めて困難に思える。

それ以外では、現政権はかなり冷静で現実的な視点に立ち、残酷かつ容赦のない世界で自分たちが直面する問題を見据えているように思える。政権内には熱烈な国際主義者がひしめき、彼らを率いる大統領は外交経験豊富だ。大統領選の選挙活動中、バイデン氏は米国をテーブルの上座に戻すことについて語っていた。ロシアや中国、イランとの問題は、可能ならやりくりをするものとし、きれいさっぱり片付けたり、明確な勝利をすることは予定していない。それは一見手に負えそうもない北朝鮮、シリア、イスラエル対パレスチナの紛争といった問題でも同様だ。

アフガニスタンとイラクでの不幸な経験の後、海外で国家を建設するという政策は何としても避けなくてはならない。そうした趨勢(すうせい)は今や3代の政権(オバマ、トランプ、バイデンの各政権)に共通のものとなっている。

とはいえ、やはり統治とは選択なのである。おそらく世界はバイデン氏を待ち構え、いくつかの大きな外交的危機の中へと引きずり込むだろう。それでも同氏が初期にとった外交行動は、国内問題に注力する男の本能を反映したものになっている。

バイデン氏の理解によれば、大統領として成功するかどうかは国外の課題を乗り越えることではなく、国内問題の克服にかかっている。おそらく共和国の未来に関しても同様だ。現在の状況を鑑みるに、その点は米国民もこの上なく同意するところだろう。

アーロン・デービッド・ミラー氏はカーネギー国際平和財団の上級フェローで、米国の大統領に関する著作がある。民主党と共和党の両政権で中東問題の協議に携わった。記事の内容はミラー氏個人の見解です。

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