ソウル良才洞(ヤンジェドン)の現代自動車グループ社屋。[中央フォト]
かつては就職人気1位に上がった現代自動車が最近人材離脱に頭を痛めている。自動運転車や電気自動車など未来車技術開発に向け採用した理工系卒業生の相当数がネイバーやカカオ、サムスン電子などのIT企業への転職を試みているためだ。定年延長を最優先とする労組に対する反感、IT業界に比べて少ない成果給などが「MZ世代」の退社要因に挙げられる。
◇586労組、低い成果給が退社理由
23日の財界によると、現代自動車、現代モービス、現代オートエバーなど現代自動車グループ系列会社で今週に入り新入社員や入社3年未満の社員の一部が相次いで退社した。退職者のうちほとんどは2日前の21日に発表されたサムスン電子新入社員公開採用で最終合格したという。匿名アプリケーションの「ブラインド」には、「サムスン電子ファウンドリー(委託生産)事業部に設備職群で合格した。南陽研究所より200倍良さようなので離職する。在鎔(ジェヨン=李在鎔サムスン電子副会長)兄さん待ってて」という書き込みが投稿されたりもした。現代モービスでは新入社員教育を受けた社員が出勤初日に会社に現れず別の会社に行っていたりもした。
現代自動車に勤務する20~30代の社員の相当数は先輩社員と比較して実質賃金が減ったと主張する。実際に現代自動車の成果給は2012年に基本給500%と定額950万ウォンをピークにその後は毎年減少している。特に昨年の賃金交渉で現代自動車労組は基本給を据え置き、シニア嘱託職を拡大する会社側の案を受け入れており、低年次社員の不満を買った。現代自動車のシニア嘱託職は60歳で定年退職する社員に契約職として1年勤められるようにする制度だ。現代自動車のある社員は「労組で成果給の代わりに定年延長だけ要求し、大卒事務職は『寺が嫌いで僧侶が出て行く』ように会社を脱出している」と話した。
◇「定年延長」VS「青年失業引き起こす」…対抗請願も
労組の主流である、現在50代で、1980年代に大学に入学した、60年代生まれの「586世代」とMZ世代間の世代対立の様相は今年に入りさらに鮮明になった。最近現代自動車労組のイ・サンス委員長をはじめとする現代自動車、起亜、韓国GMの自動車3社の労組が「定年を64~65歳に延長してほしい」という国会誓願を上げると、青瓦台(チョンワデ、大統領府)掲示板には「定年延長は有能な人材を雇用しにくくさせ、青年失業を引き起こす」としてこれに対抗する請願が上がったりもした。請願人は自身を「MZ世代現場職」と紹介した。
現代自動車はIT企業と比較すると基本給も少ないというのがMZ世代の主張だ。製造業の特性から通常賃金反映問題のため全賃金のうち基本給の割合を減らした過去の賃金算定方式のためだ。MZ世代に人気のオンラインゲーム「バトルグラウンド」を開発したクラフトンは初任年俸6000万ウォンを保障している。これに対し現代自動車新入社員の昨年の基本給は4300万ウォン前後という。
MZ世代は就職人気1位をめぐり比較するサムスン電子の4800万ウォン(成果給除く)と比べても現代自動車の初任給は少ないと指摘する。サムスン電子半導体部門の場合、成果給として基本給の約50%を支給する。最近も現代自動車では新入社員教育を担当する人事担当者が「自由に意見を陳述しなさい」としてカカオトークに匿名のチャットルームを作ったが、年俸と福利厚生に対する不満があふれるとすぐにチャットルームを「爆破」する事態が起きたりもした。
◇「一生の職場に合わせていた人事制度修正しなければ」
現代自動車グループ内部では再び人材流出が広がるのではないかとの懸念が高い。SKハイニックスが8月入社を目標に最近新入社員採用を進めているためだ。SKハイニックスは最近の労使合意で大卒新入社員の初任給を5040万ウォン(成果給除く)に引き上げた。淑明(スクミョン)女子大学経済学部のクォン・スンウォン教授は「自動車のように転換期を迎えた産業は既存の成長方式を維持するのが難しい。既成世代が享受した『一生の職場』の概念はこれ以上持続不可能なだけに、企業もMZ世代に合わせて労務・福祉制度を修正しなければならないだろう」と指摘した。