「世界の工場」と呼ばれる中国に10年ぶりの深刻な電力難が近づいている。広東省などでは電力配給制で日々を乗り越えているほどだ。香港に近い広東省は中国の核心産業地域に挙げられる。電力難で生産に支障が出れば、グローバル製造業サプライチェーンの「ボトルネック」現象が懸念される。
中国南部の電力難が最も深刻だ。米CNN放送は「広東省だけでなく雲南・江西・浙江省など少なくとも9省で配給制など電力規制が施行されている。該当地域は英国・ドイツ・フランス・日本を合わせた面積とほぼ同じ」とし「中国は17省で電力使用を制限した2011年以降、最も深刻なエネルギー不足に直面している」と伝えた。
広東省は中国国内総生産(GDP)の10%、中国の貿易の25%を担う。中国経済メディアの財新によると、5月中旬から広東省は省都の広州と深セン・珠海・東莞など17都市に電力消費制限措置を発令している。広東省には通信企業のファーウェイ(華為技術)、家電企業の美的集団とTCL、電気自動車企業のBYDなど主要企業の本社や生産施設が集まっている。米アップルに部品を供給する立訊精密、ファウンドリー(半導体委託生産)企業のSMICもこの地域にある。
広東省は地域内の企業に電力の使用を最大限に抑えるよう指針を出した。今年末まで電力使用量がピークとなる時間帯には工場の稼働を最小限にする。週に数日間は工場の稼働を停止する電力配給制も施行中だ。財新は「東莞では1週間に4日間だけ工場を稼働し、3日間は停止するよう指針が出ている」と伝えた。
年初から中国で景気回復ペースが速くなり、工場稼働の需要が増加した。5月から広東省などでは異常高温のため冷房設備の使用も大きく増えた。中国は今夏の猛暑を予告した状態だ。SK証券のパク・ギヒョン研究員は「今後2、3カ月間は高温で冷房の需要が急増するだろう」と予想した。
電力の供給には「赤信号」がついた。中国の電力生産で火力発電が占める比率は56.6%(昨年基準)にのぼる。水力発電(16.8%)や原子力発電(2.3%)と比較すると、火力発電の比率がかなり高い。ところが火力発電の主原料である石炭の価格が急騰した。中国国家統計局によると、先月初めの中国の石炭価格は1トンあたり878元(約1万4750円)だった。1年前と比較すると70%ほど高い。
石炭を輸入する条件も悪化した。オーストラリアとの対立のためだ。中国は2019年まで石炭輸入量の約60%をオーストラリアから調達してきた。オーストラリアは昨年、新型コロナの発源地を調査しようと提案した。すると中国はオーストラリア産の石炭輸入を禁止した。CNNは「中国はインドネシアと南アフリカからの石炭輸入を増やした。しかしオーストラリア産石炭の輸入不足分は埋まっていない」と伝えた。
中国は自国の石炭生産を増やすのも難しい。習近平国家主席は2060年までに炭素排出ゼロを実現するという計画を提示した。中国は共産党創党100周年記念日を控え、大型炭鉱の作業を中断した。中国証券会社の首席戦略家は「世界最大石炭消費国の中国の野心に満ちた目標が自国の石炭減産を招いた。それで石炭価格が急騰した」と話した。
電力難は中国の生産活動に相当な支障をきたすと予想される。昨年、中国では建設と製造業の電力消費量が全体の約70%を占める。先月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.9と、3カ月連続で下落した。中国国家統計局は「製造業が冷え込んだ背景の一つは電力難」と説明した。