欧州連合(EU)が他国で生産した製品にも域内の製品と同じ環境費用を賦課する国境炭素税を導入する。生産地とは関係なく環境費用を課すという点で、今まで出てきた規制のうち最も強いと評価される。先進国の環境規制を避けて反射利益を受けてきた韓国をはじめ、中国など開発途上国が打撃を受けると予想される。
欧州委員会は14日(現地時間)、2050年の炭素中立(カーボンニュートラル)に向けた核心12法案が入った「フィット・フォー・55(Fit for 55)」を公開した。「フィット・フォー・55」は2030年までに温室効果ガスの排出を1990年比で55%減らす政策。特に注目される分野は炭素国境調整制度(CBAM、国境炭素税)だ。国境炭素税とは、製品を生産する過程で生じた炭素が自国の製品より多ければその超過分に対する費用を支払わせる制度をいう。2023年から適用されるが、3年間の転換期間後、実際の費用賦課は2026年から始まる。鉄鋼・セメント・肥料・アルミニウム・電気の5分野にまず適用し、長期的に拡大していく計画だ。
EUが国境炭素税を導入した理由は自国産業保護のためだ。EUの環境規制による負担のため企業が海外に生産施設を移すと、生産施設でなく製品にも費用を賦課することにした。この場合、環境技術が進んでいるEU企業を保護しながら、開発途上国の「ただ乗り」を防ぐ効果もある。
EUは国境炭素税を賦課するために輸入製品に「炭素排出権取引制(ETS)」を適用する方法を選択した。EUに輸出する企業は、排出権の価格を基準にしたCBAM証明書を購入しなければならない。証明書の購買に追加の費用がかかるという点で事実上関税賦課の効果を持つ。
これを受け、韓国国内の鉄鋼・アルミニウム業界が直撃弾を受けることになった。韓国貿易協会によると、昨年EUに輸出した韓国の鉄・鉄鋼は15億2300万ドル(約1兆7385億ウォン)と、国境炭素税が適用される5種目のうち最も多い。続いてアルミニウムが昨年約1億8600万ドルを輸出している。肥料はEUへの輸出額が少なく、セメントと電気はない。産業通商資源部も15日、鉄鋼・アルミニウム業界だけを呼んで国境炭素税への対応方向について議論した。
被害規模は分析機関ごとに大きな差がある。対外経済政策研究院(KIEP)はEUが国境炭素税で1トンあたり30ユーロを全業種に適用すれば年間10億6100万ドルを負担することになると予想した。関税率にすれば約1.9%だ。全国経済人連合会はさらに悲観的だ。2019年の温室効果ガス排出量に1トンあたり10ドルを賦課すれば全体産業で7兆2557億ウォン(約7000億円)、1トンあたり50ドルなら36兆3000億ウォンの追加負担が生じるという見方を示した。特に鉄鋼は税額によって1兆3532億-6兆7658億ウォンの費用を出さなければならない。
ただ、政府と専門家は国境炭素税規模を推定するのはまだ早いという立場だ。国境炭素税はEUで生産した製品より炭素の排出が多い場合、その超過分に費用を出すという概念だ。すべての排出量に費用を出すわけではない。また、国内で炭素排出費用をすでに納付したとすればその金額だけ免除される。
このために国内の環境規制がEUで認められることが重要だ。実際、韓国もEUと共にETS制度はもちろん、RE100や再生可能エネルギー供給義務化(RPS)などの炭素中立制度を運用している。産業部の関係者は「韓国は欧州以上の炭素中立政策を進めていて、国境炭素税の適用から除外されるべきというのが政府の立場」と述べた。
ソウル大地域システム工学部のイ・ドングン教授(元韓国気候変動学会長)は「炭素中立計画の方向性はすべて正しい」としながも「ただ、気候変動を招いて発展した先進国がその責任を外国に賦課する形になれば不公正」と指摘した。
この日、グリーンピース・ソウル事務所は「脱炭素経済への転換は韓国輸出企業もこれ以上先送りできない生存条件に浮上した」とし「国内の産業界と政界が2030年の温室効果ガス削減目標の上方修正をする必要がある」と主張した。
業界の計算は複雑だ。国内企業の負担は増えるが、中国など他の競争国を抑えるテコとしても活用可能だからだ。
産業研究院のイ・ジェユン研究委員は「EUに輸出する鉄鋼会社の環境費用負担が増え、環境技術でリードするEUの鉄鋼企業の売上増加が予想される」としながらも「ただ、EUに輸出する国のうちロシアやウクライナと比較すると韓国企業の炭素削減能力が進んでいるので相対的に優位」と述べた。