「風呂にも入れない、料理もできない。これから寒くなるのに、ガスヒーターも使えない。もし実施されたら、とんでもないことだよ」
そう驚くのは、都内に住む指定暴力団関係者だ。
発端は9月上旬、東京ガスが一部契約者に向けて配布した「ガスのご契約内容に関するお知らせ」と題するチラシだ。そのチラシは、東京ガスが顧客に向けて一部の契約条項が変更されたことを伝える内容のもの。
そのなかに「お客さまには、自己又は自己の役員が、現在かつ将来にわたって暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、総会屋等の反社会的勢力に該当しないことを表明し、保証していただきます」と書いてあるのだ。
「東京ガスのホームページに掲載されている、より詳細な約款には『これらに違反した場合はガスの需給契約を解約することがあります』と書いてある。つまり、我々ヤクザがこのまま契約をしていると、ある日突然ガスを止めらる可能性があるということだ。この約款が実施されるのは10月1日からなので、あと1カ月もない。組をまたいだ暴力団関係者の間でもこの情報が一気に広まり、みんな動揺している」(前出の暴力団関係者)
本誌が確認した限りでは、同じく都市ガス大手の大阪ガスも10月1日に、東京ガスと同様の約款の変更をおこなう予定となっている。この2社だけで都市ガスシェアの6割以上を占めるため、暴力団関係者にとってその影響は甚大だ。また、東邦ガスや北海道ガスなど、以前から“反社”との契約をおこなわないという規定を設けているガス会社もある。
東京ガスは、今回の約款改定についてこう話す。
「2017年からガスの自由化が進められましたが、東京ガスと大阪ガスは大手のため規制が続いていました。それが今年10月1日から完全自由化されることになり、それにともなって反社会勢力への供給停止について約款に明記することになりました。具体的に、10月1日からどのように運用するかはまだわかりません。これまでのところ、反社会勢力と判明したことでガス会社がガスの供給を止めたという例は聞いたことがありません」(東京ガス広報部)
たしかに、ガスは大切なライフラインの一部だ。暴力団員だという理由だけで、ガスを利用できないのは、基本的な人権の尊重を定めた憲法に違反するのではないか。
人権問題に詳しい宇都宮健児弁護士は「暴力団対策法がある限り、反社に対する制限は合法になってしまう」と指摘する。
「暴力団の構成員らに対する生活権などの制約は、根本的には憲法違反ですが、暴対法や暴排条例によって合法化されています…etc
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「各県警は、暴力団の本部事務所や幹部らの自宅を把握している。だから、まずは組事務所のガスを止めるのではないか。組員の自宅は、家族や親戚名義で契約していることが多いからすぐには止められないかもしれない。でも、それも時間の問題だ。プロパンガスに代えることも厳しいだろう。いっそのことオール電化にしてしまったほうがいいかもしれないね」
今年の冬は、彼らにとって厳しい寒さになりそうだ。
暴力団員は10月から“都市ガス供給停止”も…約款変更でヤクザ界に激震! 弁護士は「嫌なら足を洗って」
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2021.09.09 16:20 FLASH編集部