「パティシエ エス コヤマ」の店舗(21日、兵庫県三田市で)=前田尚紀撮影
人気洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」(兵庫県三田市)の運営会社で違法な長時間労働が行われていた問題で、伊丹労働基準監督署は21日、法人としての同社と幹部2人を労働基準法違反容疑で神戸地検に書類送検した。1か月の時間外・休日労働は最長の社員で342時間に達し、勤務記録に社員の労働時間を過少に記載していた疑いもあるという。同社は2度の是正勧告を受けながら従わず、同署は「法違反を繰り返し、悪質」と刑事責任を問う必要があると判断した。
幹部は、運営会社「パティシエエスコヤマ」の製造部長(36)と経営サポート本部次長(現・管理本部長)(40)。発表では、同社と2人は2021年1月16日~2月15日、製造部門の社員11人について、時間外・休日労働の法定上限(月100時間)を超えて働かせるなどした疑い。2人は労働時間を管理する立場にあったという。同署は認否を明らかにしていない。
11人はロールケーキやアップルパイなどの製造を担当。いずれも月100時間を大幅に超える時間外・休日労働を行い、最長の社員で342時間。1日の最長労働時間は19時間30分に及んでいた。
同社は18年1月15日と21年1月14日の2回、社員に100時間超の時間外労働をさせていたとして同署から是正勧告を受けていた。しかし、2度目の勧告を受けた時期はバレンタインを控えた繁忙期で、対応できずに長時間労働を続けたとみられる。
関係者によると、同社が保管していた勤務記録には、実際と異なる労働時間が書かれていた。労働時間を過少に記録したり、あらかじめ定めた時間を超える労働を除外したりする手法で、虚偽記載していた疑いがあるという。
同社は、1990年代にテレビのコンテスト番組で活躍した代表取締役の小山進氏(57)が設立。社員約100人で、2020年8月期の売上高は約18億6000万円に上る。看板商品はロールケーキ「小山ロール」で、小山氏は世界的なチョコレートの品評会で最高位に輝いたこともある。