全焼した住宅(7日午前11時56分、福岡県嘉麻市で)
7日午前6時50分頃、福岡県嘉麻市下臼井の会社員坂本憲介さん(69)方から出火、木造2階建て住宅を全焼した。焼け跡から性別不明の大人3人と子どもとみられる1人の遺体が見つかったほか、やけどを負って病院に搬送されていた坂本さんが約6時間半後に死亡した。福岡県警嘉麻署が、焼け跡で見つかった遺体の身元の確認を進めるとともに出火原因を調べている。
【写真】消火活動が続けられるなか、激しく燃え上がる住宅(7日午前7時5分頃、福岡県嘉麻市で)
同署によると、坂本さん方は、妻(66)と長女(45)、四女(28)の4人暮らし。出火当時、4人のほかに、近くに住む坂本さんの長男(24)とその息子(3)が一緒におり、長女は逃げ出して無事だった。
(写真:読売新聞)
同署は遺体が長女と坂本さんを除く4人の可能性があるとみて、8日にも司法解剖して死因や身元の確認を進めるとともに、消防と合同で実況見分を行い、出火原因を調べる。捜査関係者によると、1階の居間付近の燃え方が激しいという。
現場は、嘉麻市役所から南西に約2・5キロの住宅密集地。飯塚地区消防本部によると、隣接する住宅2棟にも延焼した。
搬送後に死亡が確認された坂本憲介さん(69)は、住宅に取り残されたとみられる家族を助けようとやけどを負いながらも自ら消火活動をしていた。真面目な人柄で、行方がわからない3歳の孫もかわいがっていたという。
近所の住民らは、坂本さんが出火当時、散水用のホースを使って懸命に火を消そうとしていたのを目撃していた。しかし、隣に住む60歳代の夫婦が消防に通報した後、外に出た時には家の前に坂本さんが倒れ、長女とみられる女性がバケツの水を手ですくって何度もかけていたという。「憲介さんは全身が真っ黒で、服と肌の見分けがつかないほどだった」と声を震わせた。
消火活動に参加した近くの男性(60)は、坂本さんと農作業を一緒にする仲だった。突然の出来事に「家族を助けたい一心だったと思う。何とか助かってほしかったが……」と肩を落とした。
勤め先の建設会社の男性社長(54)によると、坂本さんは毎日午前7時過ぎには出勤し、いつも一番乗りだった。連絡が取れていない長男(24)の息子で3歳の孫をかわいがっていた様子で、通園する保育園が1月末に新型コロナウイルスの影響で休園になった時には、「孫の面倒をみるので休みます」と連絡があったという。「明るく気さくな性格。仕事ぶりは真面目で、同僚の信頼も厚かった」と話した。
県警嘉麻署によると、長男と孫は先週から坂本さん方に来ていたという。火事を知って駆けつけた近くに住む坂本さんのいとこの女性は、「正月に憲介さんと孫があいさつに来てくれた時は元気な様子だったのに」と話した。