自宅に取り残された生後半年の息子と女性
各地で感染が急拡大した新型コロナウイルスの『第5波』。大阪府内の自宅療養者は、2021年9月2日に(当時)過去最多の1万8107人に達しました。中には適切な医療が受けられなかったケースも。今回、記者が知り合ったのは、入院できずに生後6か月の赤ちゃんとたった2人で自宅に取り残された女性です。SNS上でのやりとりを振り返りながら、女性の過酷な自宅療養、そして想像を絶する後遺症の影響をつぶさにお伝えします。
SNSの投稿に込められた叫び
記者が見つけた入院中の女性の投稿
8月29日。SNSを見ていると、新型コロナに感染し現在入院中だという、ある投稿が目に飛び込んできました。
『(大阪は)親子入院の医療体制ができていない』
『保健所からは生存確認の電話も来ない』
親子入院の医療体制ができていないとはどういうことだろうか?ちょうど自宅療養について取材をしていた私は、投稿した方に「詳しく話を伺えますか」とメッセージを送りました。その日の夜、入院までの経緯を書いた返事がありました。内容に衝撃を受けた私は「ニュースにしてもいいでしょうか」と尋ねます。するとこんなメッセージが届きました。
女性から「取材を受ける」との返事が
「これは現実で起こっていることなので・・・どうかよろしくお願いします。」
夫が緊急入院 そして自らも感染
佐藤珠代さん(仮名)28歳。普段は大阪市内にあるアパートで、40代の夫と生後6か月の息子、そして愛犬と暮らしています。
「育児で大変な時もありますが、子どもの成長を楽しみに毎日過ごしていました。」
夫は緊急搬送、女性は見送ることしかできなかった・・・
そんな平和な日々が一変したのは、8月20日。倦怠感を覚えた珠代さんの夫が、近所のクリニックでPCR検査を受けところ、新型コロナに感染していることが判明しました。診断は『軽症』でしたが、わずか3時間後に体調が悪化。
「夫が2回痙攣して、意識を消失したんです。」
そのまま、重症化を防ぐため中等症病床のある病院に緊急搬送されました。自分にも家庭内感染のおそれがあると思い、珠代さんはクリニックに駆け込みます。息子の検査も依頼しましたが、医師に子どもはできないと言われ、自分だけ検査をすることに。結果は陽性。最初に頭をよぎったのは、まだ授乳が必要な息子の存在でした。濃厚接触者となった息子を高齢で基礎疾患のある両親に預けることは難しい・・珠代さん自身も保健所からの指示があるまでは入院できず、2人きりでの自宅療養を余儀なくされました。