【藤井四冠が最年少5冠達成】王将のタイトルを獲得し、記念撮影に応じる将棋の藤井聡太五冠=12日午後、東京都立川市(川口良介撮影)
圧勝で最年少5冠! 将棋の藤井聡太四冠(19)=棋聖・竜王・王位・叡王=が12日、東京都立川市内で行われた第71期王将戦七番勝負第4局で渡辺明王将(37)=名人・棋王との三冠=に114手で勝ち、開幕から4連勝で王将位を奪取した。19歳6カ月24日での5タイトル同時保持は、1993年8月に羽生善治九段(51)が達成した当時の22歳10カ月を抜き、最年少記録。史上たった3人しかいなかった5冠達成者の仲間入りを果たした。
強い。強すぎる。伝説の大棋士たちに、19歳が肩を並べた。藤井四冠が4連勝で王将奪取。故大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人(74)、羽生九段と永世名人の資格を持つ〝レジェンド〟3人しか成し遂げていない5冠となった。しかも3人をしのぐ史上最年少。初の10代5冠誕生だ。
「自分の実力を考えると、出来過ぎな結果。今後、そういう立場に見合う実力をつけていければと思います」
4冠保持者と、名人位を含む3冠保持者の頂上決戦。午後6時23分、渡辺前王将が目をつぶり、意を決して「負けました」と投了した。終局直後、藤井新王将は5冠達成にもいつもながら謙虚に受け止めた。
快進撃は止まらない。昨年10~11月の竜王戦七番勝負に続き、今回もストレート勝ち。タイトル戦の対局では昨年8月25日に防衛した王位戦第5局以降、10連勝となった。
昨年9月に3つ目のタイトルとなる叡王を奪取。そこから5冠達成までわずか5カ月だ。これまで最年少5冠記録を持っていた羽生九段は1993年8月に当時22歳10カ月で達成したが、3冠から5冠までに要した期間は7カ月。これを上回るスピード出世となった。
師匠の杉本昌隆八段(53)は「進化のスピードが速すぎて、むしろ戸惑っています。4冠目の竜王を取ったのも大変な偉業でしたが、このスピードは驚き」と舌を巻く。
〝夢の全8冠〟へ|。8タイトル中、5つを制した。夢は現実味を帯びる。21年度は5冠までとなるが、王座と棋王は22年度に挑戦できる可能性がある。
プロ入りから最短で5年かかる名人への挑戦権を争う順位戦では現在、B級1組で9勝2敗と首位。3月9日の最終局に勝てば、最上位クラスのA級へ昇級する。A級1期目で名人への挑戦権を獲得すると、2023年4月頃からの名人戦七番勝負に出場できる。そこで奪取すれば、谷川浩司九段(59)の最年少名人記録(21歳2カ月)を20歳10カ月前後で塗り替えることになる。
記録については、意識することはないと常々公言。この日も、終局後の会見で8冠について「具体的に目指すということではない。実力を高めていくことで、そういったこと(全冠制覇)に近づいていけたらいいのかな」と気負いはない。
激闘を繰り広げた対局室からは「富士山が見えた」という。プロ入りから約5年4カ月。タイトル戦は初挑戦から敗退することなく通算7期となった。自然体で、おごることなく、ひたすらに頂を目指していく。