
果樹被害をもたらすハタネズミ
青森県津軽地方のリンゴ園などに生息し、冬場を中心に果樹被害をもたらすハタネズミは、積雪下で積極的に繁殖し、春先に個体数を最大化させていることが弘前大学などの研究グループの調査で分かった。15センチ以上の積雪で地温は常に0度以上に保たれ、餌となる草が維持され、雪深いため天敵の狩り成功率も下がることが要因。春から秋に下草を低く保ち、天敵に駆除されやすくすることなどが重要だ。
【画像】雪の下で繁殖したハタネズミの子
同大学のムラノ千恵研究員らのグループは2017~19年に青森県弘前市のリンゴ園で捕獲調査を実施。データを解析して個体数変動や生存率を推定した。積雪前の11月と融雪した4月に個体数を比較したところ、積雪中にハタネズミが2、3倍増えていることが分かった。一般的なハタネズミは春から秋が繁殖期で、個体数のピークは夏。積雪下で繁殖するのは世界的にも珍しく、北極圏に生息するレミングの仲間以外に報告はほぼないという。
「秋までに個体数少なく」
津軽地方の場合、ハタネズミの餌になる草本植物は雪に覆われた方が霜害などを受けずに維持され、積雪が深いほどフクロウやキツネなどの天敵の狩り成功率が下がる。ハタネズミが安心して暮らせる環境だという。
ムラノ研究員は「春から秋に下草を低く保つことで、天敵の狩りを助けることにもつながる。秋までに個体数をできるだけ少なくすることが重要だ。積雪期の餌になる草本植物を残すことも果樹の被害防止につながるのでは」と話す。
ハタネズミによるリンゴ樹の食害は、積雪が多い地域を中心に発生。中には枯死する木もある。被害実態の把握も進まず、農家にとって防除は大きな課題となっている。
日本農業新聞