ガードレールが盗まれた現場(千葉県香取市で)=千葉県提供
ガードレールや蛇口などの身近な金属製品の盗難が多発している。新型コロナウイルスの影響で、鉄を始めとした金属価格は高騰しており、多くは買い取り業者への売却目的とみられる。自治体はパトロールを強化し、業界団体は盗品の疑いがある場合は扱わないなど対策に乗り出した。
「現金に換えて生活費に充てていた」。3月、窃盗容疑で逮捕・起訴された千葉県柏市の古物商の男(63)はそう供述した。起訴状では、男は栃木県真岡市で同月、ガードレール18点(時価40万6000円相当)を盗んだとされる。
千葉県内では昨年12月以降、鉄製のガードレールや、ガードレール端の湾曲した袖と呼ばれる部分の盗難が相次いでいる。県によると、県管理の国道や県道で3月8日までに14件(計約96万3000円相当)確認された。
茨城県でも昨年度、水田に水を送る給水管の蛇口(バルブ)が900個以上盗まれた。被害は前年度の7倍超。群馬県伊勢崎市では昨年11月~今年1月、道路の側溝にかぶせる鉄製の蓋が80枚盗まれ、被害額は約116万円に上った。
被害多発の背景には、金属価格の高騰がある。鉄スクラップの取扱業者などでつくる「日本鉄リサイクル工業会」(東京)によると、3大都市圏で2020年4月に1トンあたり1万9100円だった鉄スクラップの平均価格は、今年3月末には6万4500円と3倍以上にはね上がった。新型コロナの影響で解体工事などが遅れ、リサイクル市場に出回る鉄の量が減っていることが価格を押し上げているという。
盗難を防ぐため、千葉県はガードレールを固定するボルトのねじ山をなくし、取り外しにくくした。見回りの回数も増やしたが、人通りが少ない道路までこまめに回るのは難しい。
日本鉄リサイクル工業会は3月17日、会員の約720事業者に注意を促す文書を送った。取引相手の身分確認を徹底し、盗品と疑われる場合は警察への相談を求めた。担当者は「違法な闇業者との売買が行われている可能性もある。対策を急ぎたい」としている。