北海道・知床半島の沖合で23日、斜里町の運航会社の観光船が消息を絶った。現場は浅瀬で岩礁が多く、これまでもけが人が出るなどの事故が相次いでいた。春が訪れてもなお海水温が低い中、26人が乗った観光船の捜索が夜を徹して行われた。
「この季節にありがちな、少し寒い天気だった」
斜里町の市街地にある民宿の女性は語る。23日の沿岸部の天気は曇りで、正午前後から少し風も強かったという。
観光船から浸水の通報があった知床半島沖の海域(23日午後6時33分、北海道斜里町で、読売機から)=多田貫司撮影
斜里町の海岸沿いにありウトロ漁港にも近い宿泊施設の男性によると、午後には漁師たちが漁から戻っており、波もあったという。
札幌管区気象台によると、斜里町では事故が起きた23日午後1時の気温は5・8度、風は秒速1・7メートルだった。第1管区海上保安本部(小樽市)は記者会見で「この時期のオホーツク海の水温は1桁ではないか」と述べ、低かったという。
低体温症に詳しい帝京大病院(東京)の三宅康史・高度救命救急センター長は「急激に体温が奪われれば、筋肉が動かなくなり、脳の活動は衰え、心拍も徐々に減ってくる。もし水中で低体温症となれば、溺れる可能性も高くなる」と話す。
三宅センター長は「救命胴衣を着ていても体温は奪われ、意識がなくなれば顔を上げ続けることは難しくなる」と語った。