(写真:読売新聞)
岐阜県内の多くの銭湯やスポーツジムなどで、タトゥー(入れ墨)のある人の入場を断っている。日本では反社会的勢力と関連づけて見られがちな一方、海外ではタトゥーが一般的な地域もあり、ファッション感覚で彫る人も多い。県内では新型コロナウイルスの収束後、訪日外国人客数の回復も期待される中、観光業界の関係者らは「一般の人の安心と、外国人との共生を両立させるのは難しい」と苦心している。(乙部修平)
銭湯
サッカーJ3・FC岐阜の選手らが足しげく通う岐阜市のある銭湯では2018年頃、「タトゥー・入れ墨のある方はご入浴できません。ただしFC岐阜の選手は例外です」との貼り紙をしていた。しかしその後、一部の利用客から「FC岐阜の選手だけ特別扱いをするのか」との声が上がったことから貼り紙を撤去。クラブには一時、タトゥーのある選手の利用を控えるよう頼んだという。
同銭湯の担当者は「タトゥーがある人の利用を断るのは風紀を守るためであり、素性の知れたFC岐阜の選手なら問題ないと考えた」と振り返る。応援の意味を含め、選手には施設を利用してもらいたいとする一方、「再び苦情が寄せられたら、対応を考えるしかない」と頭を悩ませている。
バスケットボールBリーグ3部・岐阜スゥープスでは、タトゥーがある外国人選手は、契約している銭湯のルールに対応し、使用を控えているといい、チーム関係者は「外国人選手に不便な思いはさせたくないが、施設利用者の安心感を損なうわけにはいかない」と話している。
県公衆浴場業生活衛生同業組合の野原伸之理事長は、「全浴連(全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会)でもタトゥー(のある人の入浴)は認めている。断ることはできない」としている。
観光業界
観光庁が19年に行った調査では、訪日外国人が「訪日前に最も期待していたこと」で、「日本食を食べること」(25・0%)や「自然・景勝地観光」(15・7%)などに次いで5番目に「温泉入浴」(7・4%)が挙げられた。一方で、同庁が15年に全国のホテルや旅館を対象に行った調査によると、過半数の施設がタトゥーがある人の入浴を断っている。