【リビウ(ウクライナ西部)=工藤彩香】ウクライナ軍の高官は11日、首都キーウで記者会見し、ウクライナを侵略するロシア軍の攻撃手法の変化や部隊の現状について分析した。露軍は空爆の回数を増やしているが精度は低く、司令官や将校の多くが解任されるなど混乱ぶりが際立つという。
高官は、露軍によるウクライナへの空爆が、先週に比べて「倍増している」と述べた。ウクライナ軍が、米国が供与した高機動ロケット砲システム(HIMARS)で露軍の弾薬庫多数を破壊した結果、露軍地上部隊の補給が混乱して進撃が鈍り、空爆を多用し始めた可能性がある。
露軍は軍事施設だけでなく民間施設も標的にしているが、攻撃機やヘリコプターはウクライナの防空網を避けて飛行しているため、攻撃の精度は低いという。
露軍では侵略作戦が思うように進まない責任を問われ、作戦立案に携わった司令官や将校のうち、「30~40%が解任されたか、調査対象となっている」との見方も示した。兵員の犠牲が大きいため、部隊構成も変化し、「約60%が短期契約の志願兵」になったという。
ウクライナ軍の別の高官は9日、地元メディアのインタビューに、露軍が占領している南部ヘルソン州について、「年末までの奪還を目指す」と自信を見せた。
英国防省は12日、南部クリミアの軍用飛行場で9日に発生した大規模爆発の影響に関し、「露軍は、クリミアを安全な後方地域とみなしてきた脅威認識を見直すことになるだろう」との分析を明らかにした。
侵略作戦の停滞が伝えられる中、プーチン大統領は11日、メドベージェフ前大統領ら政権幹部の訪問団をウクライナ東部に派遣した。大統領府第1副長官や情報機関・連邦保安局(FSB)長官、内務省などのトップで構成し、占領地域をウクライナに返還する意思がないことを強く示した。
メドベージェフ氏は11日、東部ルハンスク州で、同州とドネツク州の親露派武装集団トップと会談したとSNSで明らかにした。会談では両州の「ロシアの法体系との調和」も議題になったという。