老朽化が進む奈良市役所本庁舎の耐震改修事業費を計上した市の補正予算案について、市議会補正予算等特別委員会は20日、賛成少数で否決した。本庁舎をめぐっては、荒井正吾知事が平城宮跡近くへの移転建て替えを推奨しているが、仲川げん市長は「耐震化に向けた方向性の中で、より詳細な議論をすべきという意見をいただいた。真摯(しんし)に受け止め、早急に対応を検討したい」と述べた。
19、20の両日開かれた特別委では、「コストの面で有利で、庁舎の安全性を早く確保できる」と耐震化に肯定的な意見があった一方で、市が提示した耐震化案に批判が集中。委員からは「目先のコストばかりでランニングコストなどの詳細を検討していない」、「居ながら工事は本当に可能なのか、外付けフレームによる耐震化が安全なのかどうか分からない」といった指摘が相次いだ。この日午後5時半から行われた採決の結果、補正予算案は賛成3、反対6で否決された。
耐震化のための総事業費約32億6千万円のうち、市は約16億8千万円を国の緊急防災・減災事業債を活用してまかなう予定。期限に間に合わせるには迅速な工事着手が不可欠として、議会に理解を求めていた。
仲川市長は委員会終了後に取材に応じ、荒井知事が提唱している積水化学工業奈良事業所跡地(同市三条大路)への移転案について「市民の安全や財政上の観点からも、耐震化案を白紙にして再考するのは現実的ではない」として、耐震化の方針を堅持する考えを強調した。