クリミア大橋の爆発 ロシアが「軍事攻撃」でなく「テロ」と表現する理由 辛坊治郎が指摘


【写真】クリミア橋の爆発現場で、真っ赤に炎が吹き上がる様子

クリミア大橋の爆発 ロシアが「軍事攻撃」でなく「テロ」と表現する理由 辛坊治郎が指摘

ロシアのプーチン大統領(ロシア・ノブゴロド)=2022年9月21日 AFP=時事 写真提供:時事通信

辛坊)ロシアとしては、クリミア大橋の爆破はあくまでも「ウクライナが主導したテロ」であるという認識です。ただ、クリミア大橋の爆発直後にウクライナのゼレンスキー大統領から「ウクライナの軍事的成果」というような言動があったことから、ウクライナによる可能性が高いともいえます。しかし、「ロシアが仕掛けたのではないか」という説もいまだに濃厚です。結局、分からないですね。

とはいえ、1つ確実に言えるのは、クリミア大橋そのものは2014年にロシアが武力で脅しをかけて併合したウクライナ領のクリミア半島に、ロシア本土と行き来できるよう造った橋です。つまり、2014年以降の不当な占拠によるロシア領化の実効支配を高めるための橋であるわけです。

ですから国際的にみれば、他人の国を占拠して勝手に橋を造っておきながら、「うちの物だ」と言うロシアの主張そのものが無茶苦茶だということになります。つまり、ウクライナがクリミア大橋を攻撃して破壊したところで、ロシアが文句を言う筋合いはどこにもないという単純な話であるわけです。

それでもウクライナは非常に慎重です。クリミア大橋は、その開通式にプーチン大統領自身が赴いて、クリミアの併合を世界に誇り、特にロシア国内に向けて大きくアピールした場所ですから、そこに手をつけるとなると、プーチン大統領が何をするか分からないと考えているのでしょう。正面から軍事攻撃で破壊するとロシアの反発が大き過ぎるので、水面下で行ったのかもしれません。ロシアは、それを「テロ」と称しているのだとも思えます。

ただ、注目すべきはロシアが本気で反撃しようと思うのであれば、「テロ」という言葉を使わずに「軍事攻撃」と言ったほうが反撃しやすいのではないかという点です。そうすれば、総動員で反撃できるわけです。しかし、「軍事攻撃」とは言わず、あえて「テロ」という表現にとどめています。その背景には、本当は「軍事攻撃」という表現を使って反撃したいのだけれども、それだけの兵力が残っていないという事情があるのではないでしょうか。「軍事攻撃」と言って総反撃ができないと恥をかくからです。



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