地味で暗い人を「陰キャ」と呼ぶ。コミュニケーションが不得意な人を「コミュ障」と呼ぶ。孤独な人を「ぼっち」と呼ぶ。それぞれの言葉の意味は異なるが、高い確率で、こうした特徴性を持つ人は重なっている。
暗い人は、明るく快活にならなければ、仕事も生活も充実したものにはできないのか。『「ぼっち起業」で生きていく。』(フォレスト出版)を上梓した、ぼっちや陰キャ経営者からの依頼が絶えない起業コンサルタントの杉本幸雄氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──杉本さんが決意して実践している非常識な行為として、(1)積極的に話さない、(2)「愛想が悪い」と言われても気にしない、(3)「付き合いが悪い」と言われても気にしない 、(4)「リアクションが薄くてつまらない」と言われても気にしない、といったコトを挙げています。
杉本幸雄氏(以下、杉本):人と積極的に話をしたり、愛想をよくしたりすることは、陽気な人は自然にできますが、陰キャやぼっちの人は意識的に頑張ってやらないとできません。そうした行為はとても辛く疲れることです。
そのため、私はある時からそうした努力をすることをやめました。その結果に発生するリスクがあるならば、引き受けようと決めたのです。
起業して20年経ちますが、こうした努力を放棄した結果、何か不都合が生じているとは感じません。むしろ周囲から「あの人はリアクションの薄い面白みのない人だ」と認識してもらえているのでとても楽です。
──杉本さんは電話の使用を極力避けて、メールやSNSなど、テキストベースで人とコミュニケーションをするようにしていると書かれています。
杉本:電話は本当に嫌いです。突然かかってきて人の時間を奪います。本当に電話でなければ済まないような問題や状況は、よく考えるとまずないですよね。去年の実績でいうと、私が電話をかけた回数はわずか4回で、電話に出た回数はゼロです。自分のことを大切にするために、電話は極力避けると決めています。
──「即レス」「即行動」をしないことが、コミュ症の強みだとも書かれています。
杉本:起業家界隈では、「即レスをしないやつはろくな人間じゃない」とか、「即レスするのができる人間だ」という教えが定番ですが、私はそんなことはないとずっと考えてきました。なぜ即レスを求めるのかといえば、それは待たされるのが嫌だからです。
逆に即レスしてしまう人は、そこに焦りがあると思います。即レスをしないと評価が下がったり、関係が悪くなったりすると思い込んでいるのです。しかし、そんなに急いで返事を返さなければならない問題がどれぐらいあるでしょうか。
即レスなどしないで、きちんと考えて、後に修正や変更をしなくていいような回答をするほうがはるかに効果的です。後からやり直すのはすごいストレスで、仕事によっては多大なコストがかかることもあります。私はむしろ、即レス・即行動は意識的に避ける姿勢に徹しています。
──「やらないことを決める」ことが重要なのですね。