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ワールドカップが始まり世界の熱い視線が集まる中東・カタール。しかし、サッカー以外でも今、カタールが注目の的になっている。ウクライナ戦争を機に始まったヨーロッパのエネルギー危機。ロシアから来なくなった液化天然ガス(LNG)の新たな輸出国として注目されているのが、カタールなのだ。このカタールのLNG争奪戦は日本にとっても他人事ではない。今回はエネルギー争奪戦の世界地図を読み解いた。
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■「日本から失われた輸入LNGの50%がヨーロッパに、50%が中国に行ったということだ」
天然ガスはパイプラインで送る場合を除いて、マイナス162度で液化して輸送する。この液化天然ガス(LNG)を、産出国カタールで積んだタンカーが、どこに移動したか映し出した航路画像がある。カタールを出たタンカーの一部は、紅海を通ってヨーロッパへ・・・。別の一部はインド洋を通ってアジア諸国へ向かう。が、日本に向かう船は殆ど無い。このタンカーの航路を調査している、シンガポールのエネルギー調査会社に話を聞いた。『VORTEXA』LNG部門責任者 フェリックス・ブース氏
「カタールの日本へのLNG輸出量は全体の11~12%だったが、今年は4%にまで減少した。(カタールが売却先を公開しないので)中東から東アジアに向かう船の最新情報を見ている。最大のポイントは、船のほとんどが日本に向かっておらず、中国、韓国、台湾に向かっていることだ。今年1月以降、日本の、カタールからのLNG輸入量は非常に少なくなり、わずかなものしか入ってこない。カタールから中国とヨーロッパへの輸出量の増加分を見てみると、日本の輸入量の減少分と同じだ。つまり日本から失われた輸入LNGの50%がヨーロッパに、50%が中国に行ったということだ」
更に今までヨーロッパは、パイプラインで天然ガスをロシアから輸入していたため、LNGの施設なども充実しておらず、限られた量しか買えなかったが、今後はロシア産を買うわけにもいかず、施設を作っているため、カタールからの輸入は増える。また、中国は来年以降も買い手になる。そのため日本のLNG購入は来年以降更に厳しくなるとブース氏は言う。実は日本の大手の会社は1997年以来、カタールから年間550万トンのLNGを購入する契約を結んでいた。この契約が去年切れ、日本は契約を更新しなかった。理由は契約が20年以上という長期契約と、他国に転売しないという条件を飲めなかったためだ。もちろん今年の状況を予測出来るはずもなかったが、他にも長期契約できない事情があった。
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査役 原田大輔氏
「去年の11月というと、COP26がグラスゴーで開かれ、世界の脱炭素の潮流がピークに達した時だった。企業にもコンプライアンスが求められる中で、今後20年炭素を出すエネルギー源を使うのかっていうことと、原子力発電所の再稼働も持ち上がっていた…。そういう時にLNGの20年30年という契約をするのはどうなのかなと…」さらに価格の面でも疑問はあった。日本の平均購入価格は、スポット購入額より高めだったが、去年の夏以降LNG価格が高騰。契約更新の11月には、スポット価格が何倍にも跳ね上がっていた。
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査役 原田大輔氏
「天然ガスの価格というのは今が非常に異常な状態でして、エネルギー危機の状態。いくつかのクライシスが起きている中の3番目のクライシス。これを去年の更新の時期には予見できなかった」かくして日本が手放してしまったカタールのLNGの半分が、ヨーロッパに流れることとなった。