ロシアの首都モスクワのバーで開かれたドラァグクイーンのショー(2022年11月13日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】ロシアの首都モスクワにあるバーの控室では、化粧道具やきらびやかな衣装に囲まれたドラァグクイーン(女装パフォーマー)たちが、合法に開催できるものとしては最後となるかもしれないショーを前に、円陣を組んで互いの手を重ねていた。
【写真】舞台袖で円陣を組むドラァグクイーンたち
ロシアでは、近く成立する見込みの新法によって、こうした女装ショーが禁止され、出演者は罰金を科されたり投獄されたりする可能性がある。だがこの日開催されたショー「ドラァグレスク・ブランチ」は、そんなことをうかがわせない陽気な雰囲気に包まれていた。
司会者のマーゴ・メイ・ハントさん(芸名)は「会場にはもう、ミモザが川のように流れているわよ。だからみんな、きょうの素晴らしいブランチを楽しみましょう!」と激励した。
出演者たちは皆、この瞬間を楽しもうとしている。なぜなら、将来のことなど誰にも分からないからだ。
同国では2013年、子どもを「同性愛のプロパガンダ(宣伝)」から守る法律が制定され、物議を醸した。そして議会は間もなく、同法の対象を拡大する法案を可決する見通しだ。新法の下では、子どもだけでなく大人向けの「プロパガンダ」も禁止される。本や映画、ソーシャルメディアへの投稿など、あらゆるものに影響を及ぼす可能性があり、女装ショーも違法となるかもしれない。
「今のところ、この法律がどんな影響を及ぼすかは分からない。弁護士には相談したけれど、考えないようにしている」。出演者のスキニー・ジェニーさん(26)はこう語った。
議会や大統領がどんな決断を下そうとも、自分たちは悪いことをしていないと信じている。「私たちのショーはプロパガンダとは何の関係もない。私たちは創造性を促し、海外だけでなくここロシアで何世紀にもわたって存在してきた異性装というアートをたたえている」
■「最悪の事態も覚悟」
ロシアでは昨年以降、LGBTなど性的少数者を支援する著名な団体や活動家の多くが「外国の代理人」に指定されるなど、性的少数者への圧力が強まっている。こうした動きは、同国がウクライナに侵攻した2月以降に加速し、政府の見解に沿わない言論が存在する余地はほぼ消滅した。