通常国会は26日閉会し、参院選が事実上スタートした。
国会会期中の最大の出来事は、202年ぶりの譲位により、国民がこぞってお祝いする中で、天皇陛下が即位されたことだ。
令和への改元も行われた。今秋の即位の礼と大嘗(だいじょう)祭がつつがなく執り行われるよう、政府は準備を進めてもらいたい。
今国会では、社会保障政策をはじめとした内政課題や中国、北朝鮮をめぐる問題など、内外情勢についての議論が深まったとは言い難い。政治家の失言が相次ぎ、厚生労働省の勤労統計不正も発覚した。参院選こそ、諸課題に関する政策論議を深めてほしい。
≪経済成長をどう図るか≫
論戦が低調だったのは、もともと国会に提出された法案が少なく、与野党が激突する対決法案がなかったことも一因だろう。
特に終盤国会は解散風にあおられ、衆参同日選を恐れた野党の腰砕けが目立った。野党は25日に内閣不信任案を提出したが、はなから可決できるはずもなく、参院選を意識したポーズと見透かされた。党利党略で動く姿が国民にはどう映ったか。
後半国会では、老後に2千万円の蓄えが必要とした金融庁金融審議会の報告書問題が浮上した。野党はこれに飛びついて政権を攻撃したが、国民の不安をあおり、政争の具としただけではないか。
報告書の受け取りを拒否した麻生太郎金融担当相の行動も混乱を深めただけである。
政府も年金制度を含めた社会保障について、国民の不安に応えたとは言えまい。経済財政運営の指針「骨太方針」は、給付と負担の在り方を含めた社会保障の総合的かつ重点的な政策は来年に行うとした。これでは重要課題に踏み込まなかったとしか映らない。
安倍晋三首相は会見で「年金を増やす打ち出の小づちはない。年金充実の唯一の道は経済を強くすることだ」と述べたが、それで不安は解消できるのか。説得力のある成長の道筋を示してほしい。
政府・与党は10月の消費税率10%への引き上げを予定通り実施する方針だ。立憲民主党など野党は消費増税の凍結を主張するが、凍結法案は出さなかった。出せなかったと言っていい。消費増税に代わる対案を作れないためだ。
消費増税分を財源とする幼児教育・保育の無償化を実施する改正子ども・子育て支援法は今国会で成立した。財源を示さず、口だけで増税凍結を言うのはたやすい。選挙目当ての無責任な態度とのそしりは免れまい。
少子高齢化を見据えてさまざまな対策が急務である。与野党とも参院選では、わが国の形をどのようにするのか、明確に提示して論戦に臨んでほしい。
≪与野党は外交防衛語れ≫
安倍首相は会見で「令和の日本がどのような国を目指すのか。その理想を語るものは憲法です」と語り、憲法について「議論すら行われないという姿勢で本当に良いのかどうか。そのことを私は国民に問いたい」と述べた。参院選では、憲法改正を正面から争点とすべきである。
今国会でも、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案は一歩も前に進まなかった。責任は与野党にある。野党は憲法審査会での審議に応じようとせず、与党も国会を延長してでも議論を進めようとはしなかった。
改正案は主権者である国民にとって重要な権利の行使に関わる。与野党の姿勢は職務怠慢と批判されても仕方あるまい。
憲法改正の核心は「戦力の不保持」を定めた憲法9条2項の改正である。わが国の平和と安全は9条が守ってきたのではない。
自衛隊と、日米安全保障条約に基づく米軍の抑止力が守ってきたのである。与野党は、この現実から目をそむけてはならない。
2項削除が9条改正のゴールだが、その前段として、憲法に自衛隊を明記することには、大きな意義がある。
中国は尖閣諸島を狙い、北朝鮮は拉致問題の進展を拒み、核・ミサイル戦力を保持している。
ホルムズ海峡では日本船籍のタンカーが攻撃を受け、トランプ米大統領は「自分の船は自分で守れ」と述べた。
わが国を取り巻く国際情勢は極めて厳しい。参院選では与野党とも、現実に即した外交防衛政策の議論を戦わせてほしい。