原油の協調減産合意、くすぶる価格高騰の懸念


原油の協調減産で加盟国と非加盟国が協議した石油輸出国機構(OPEC)の会場=2日、ウィーン(ロイター)

 石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国が、原油の協調減産の9カ月間延長で合意したのは、米中貿易摩擦などに伴う世界経済の減速を背景に、原油需要の伸び悩みが見込まれるためだ。ただ、米国とイランの対立などで中東情勢が緊迫化する中、供給不安が原油価格を急激に押し上げる可能性もくすぶる。

 協調減産で合意した背景には、原油価格が伸び悩むとの観測がある。国際エネルギー機関(IEA)によると、2019年の原油需要見通しは前年比で日量120万バレルの増加で、昨年末時点より20万バレル下方修正したが、OPEC総会ではさらに低水準となる114万バレル増の予測が示された。

 米中貿易摩擦などによる景気減速がエネルギー需要を低迷させ、価格を押し下げるとの想定で、米国のシェールオイルの増産・輸出拡大に対する対抗も意識されたとみられる。野村証券の大越竜文シニアエコノミストは「減産期間を6カ月でなく9カ月としたことがOPECの危機感を反映している」と分析する。

 だが足元では、米中首脳会談で米国の追加関税発動の懸念が薄らいだ。米連邦準備制度理事会(FRB)も7月にも利下げに踏み切るとみられ、世界景気の減速懸念は和らぎつつある。中東における地政学リスクだけが意識されれば、今回の協調減産と相まって、過度な原油価格の上昇局面を迎える恐れもある。

 1日のニューヨーク原油先物相場は指標の米国産標準油種(WTI)の8月渡しが前営業日比0・62ドル高の1バレル=59・09ドルと小幅な伸びで取引を終えた後、時間外取引で一時下落するなど、市場も方向感を定め切れない。大越氏は「軍事衝突に至らずとも、イランを取り巻くリスクは残っている」と、今後の相場に注意が必要との認識を示した。(佐久間修志)



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