
米海軍が調達する装備・弾薬の取得コストは国防権限法(NDAA)の中で公開されており、2023年の調達単価はF-35C=1.3億ドル、MQ-25A=1.7億ドル、アーレイ・バーク級駆逐艦=19.3億ドル、トマホーク=292万ドルになる。
MQ-25の導入コストは1.7億ドルなので予想より調達性が優れていると言えるが非常に高価だ
通常、防衛装備品のコストは関連費用が含まれている場合が多く純粋な単価が良くわからない仕組みになっているが、米国の国防予算に関する大枠を定めた国防権限法(NDAA)には米軍が2023会計年度に何を、幾つ、幾らで調達するのか明記されており、今年も各軍が2023年に何を、幾つ、幾らで取得するのか見ていくことにする。
調達する航空機・艦艇・弾薬 | 調達コスト | 調達単価 | FY21 NDAAとの比較 |
F/A-18E/F×8機 | 7.4億ドル | 9,200万ドル | 24機/17.3億ドル/7,200万ドル |
F-35C×13機 | 17億ドル | 1.3億ドル | 23機/23.7億ドル/1.03億ドル |
F-35B×15機 | 19.5億ドル | 1.3億ドル | 10機/10.1億ドル/1.01億ドル |
CH-53K×10機 | 19.1億ドル | 1.9億ドル | 7機/8.0億ドル/1.14億ドル |
MV-22B×2機 | 2.4億ドル | 1.2億ドル | 11機/11.2億ドル/1.02億ドル |
P-8A×0機 | 調達終了 | 調達終了 | 8機/14.2億ドル/1.78億ドル |
E-2D×7機 | 12.4億ドル | 1.8億ドル | 4機/6.1億ドル/1.52億ドル |
KC-130J×10機 | 11.4億ドル | 1.1億ドル | 5機/3.7億ドル/0.74万ドル |
MQ-4C×3機 | 5.8億ドル | 1.9億ドル | 1機/2.4億ドル/2.4億ドル |
MQ-25A×4機 | 6.9億ドル | 1.7億ドル | |
バージニア級×2隻 | 45.3億ドル | 22.6億ドル | |
アーレイ・バーク級×3隻 | 58.1億ドル | 19.3億ドル | |
コンステレーション級×1隻 | 10.8億ドル | 10.8億ドル | |
サン・アントニオ級×1隻 | 16.7億ドル | 16.7億ドル | |
アメリカ級×1隻 | 13.7億ドル | 13.7億ドル | |
AIM-9X×207発 | 8,910万ドル | 43万ドル | 270発/1.3億ドル/48万ドル |
AIM-120×337発 | 3.4億ドル | 99万ドル | 325発/3.3億ドル/101万ドル |
AARGM-ER×69発 | 1.3億ドル | 189万ドル | |
JASSM×31発 | 5,840万ドル | 188万ドル | |
LRASM×60発 | 2.3億ドル | 376万ドル | 48発/1.7億ドル/354万ドル |
GBU-39II×481発 | 1.1億ドル | 23万ドル | 357発/0.78億ドル/22万ドル |
JAGM×293発 | 7,830万ドル | 26万ドル | |
ヘルファイア×110発 | 660万ドル | 6万ドル | |
JDAM×3,037基 | 7,600万ドル | 2.5万ドル | 1万基/2.1億ドル/2.1万ドル |
トマホークBlockⅤ×137発 | 4.0億ドル | 292万ドル | 155発/2.5億ドル/161万ドル |
SM-6×125発 | 4.9億ドル | 391万ドル | 125発/4.1億ドル/320万ドル |
ESSM×136発 | 2.8億ドル | 207万ドル | 120発/1.2億ドル/100万ドル |
RAM×100発 | 9,200万ドル | 92万ドル | 100発/0.9億ドル/90万ドル |
MK-48×83発 | 2億ドル | 240万ドル |
軒並み航空機の調達単価が上昇しているが、特筆すべきはMQ-25Aの調達コストが1.7億ドルという点だ。
米海軍の空母航空団に配備されているF/A-18の約3割は空中給油任務に従事しており、これを解放して本来の任務に戻すことを目的に開発されているのがMQ-25Aで、同機の開発と量産機取得に150億ドル/約1兆6,000億円かかると見積もられている。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Brandon Roberson
MQ-25はF/A-18E/Fと同サイズで空母から500海里/926km先に約15,000ポンド/約6,800kgの燃料(機内タンクと増槽×2本構成)を届けることが出来ると海軍は説明しているが、空中給油任務に使用されるF/A-18E/Fは同条件で29,000ポンド/約13,000kgの燃料(機内タンク+ARS×1本+増槽×4本構成/ARSと増槽2本構成でも9,400kgの燃料を運べる)を届けることが出来るため空中給油任務にMQ-25を使用するのはF/A-18E/Fよりも効率が悪い。
さらにプログラムコストを調達予定数で割るとMQ-25の導入コストは1機あたり2.1億ドルになると予想されていたが、FY23での調達コストは1.7億ドルなので予想より調達性が優れていると言えるだろう。

出典:U.S. Navy
最終的にMQ-25Aは情報収集・監視・偵察(ISR)任務や戦術通信の中継任務にも対応する予定で、F/A-18E/Fにない価値や将来性を示して空母航空団の中に居場所を確保できるかが注目される。
因みに海軍はFY23でアーレイ・バーク級を2隻(43.7億ドル)を要求していたが、議会は3隻分の予算(58.1億ドル)を配分したため同艦の調達コストは21.8億ドルから19.3億ドルに低下しており、大型艦艇の取得コストは発注数に大きく左右されることが如実に現れていて非常に興味深い。

出典:Public Domain AN/SPY-6を搭載するアーレイ・バーク級駆逐艦FlightIII
ESSMの調達コストが高騰しているのは新型のBlock2に生産が切り替わったためためだと思われ、アメリカ級の建造資金は複数年に分割されているため13.7億ドルではない可能性が高い。
米海軍、開発を進めている無人機MQ-25がF/A-18Fへの空中給油に初成功
米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01億ドル
米陸軍の装備調達コストは?M1A2Cは11.5億円、AH–64Eは16.3億円、AMPVは4.2億円
米海軍の装備調達コストは?SM-6は3.3億円、F-35Cは107億円、イージス艦は1,560億円
米空軍の装備調達コストは?F-35Aは92億円、F-15EXは107億円、KC-46は187億円
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Brandon Roberson