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広島県外の中学校。校舎に更衣室がある
記者(26)は中学生だった10年ほど前、女子とは別の教室で着替えていた。小学生のときは男女で同じ教室だった。いずれにせよ更衣室ではなかった。「子どもは教室で着替えるのが当たり前」と思い込んできたが、そうではないようだ。
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昨年秋、広島県教育委員会に匿名の手紙が届いた。送り主は広島市内の小学校に子どもを通わせている保護者とみられた。
子どもの声を、こう寄せた。
「監視カメラみたいでイヤだと言っています」
担任の女性教諭が「授業の改善のため」として教室後方にビデオカメラを設置し、授業後も撮影し続けていたという。
体育の授業の前後に、教室で着替える児童が映っていた可能性があるという。
広島市教委が調べたところ、女性教諭は「電源の切り忘れ」と説明し、パソコンなどに着替えの映像は確認されなかったという。教諭は処分されなかった。
この問題は地元の中国新聞でも報じられた。ネット上では、こんな議論を呼んだ。
「そもそも、なぜ教室で着替えなくてはいけないの?」「更衣室を準備した方が、児童のためにも、教員の身を守るためにも良い」
市に問い合わせると、担当者は「多くの校舎が建てられた数十年前、学校に更衣室をつくる発想はなかった。学校の予算は学習用具の確保や危険箇所の補修などが優先され、更衣室まで回らない」と話した。
広島市立では校舎内に更衣室がある小中学校はなく、体育館に7割余りが設置。昨年5月時点で小学校は141校中103校、中学校は63校中48校だった。残り2割は更衣室がなく、男女が同じ教室で着替える学校もあるとの説明だった。
30年ほど前は小中とも4割が更衣室を設置していなかったが、建物の改修に合わせて新設する学校が増えているという。子どもが多い市中心部では、更衣室として使う空き教室すら足りないとのことだった。
ただ、教室での事件は後を絶たない。広島県内では昨年6月、庄原市立小学校で児童が授業や着替えで利用していた理科室に小型カメラを設置したとして、教諭だった20代の男が逮捕、起訴され、執行猶予付きの有罪判決が出た。
愛知県尾張地方の公立中学では昨年11月、男子生徒が学習用のタブレット端末を使い、教室で着替え中の女子生徒を盗撮していたことが判明している。
文部科学省によると、学校内への更衣室の設置は義務付けられていない。文科省は設置状況の全国調査をしておらず、設置数もわからないという。
担当者は「子どもの数や空き教室の状況など、学校ごとに事情が違う。教室での着替えに違和感があるのは理解できなくないが、全国一律で設置を指示するのは現実的ではない」と話す。
子どもを守るために更衣室を設置してあげたいが、予算やスペースの都合からすぐには難しい――。では、どうすれば良いのか。
兵庫県丹波篠山市にヒントをみつけた。
市立八上小では男子更衣室がなく、高学年の男児から不満の声が上がっていた。昨年5月、児童会が全校児童にアンケートしたところ、67%が男子更衣室は「必要」と回答した。
教諭らは児童会のメンバーと議論を重ねた。「教室から行きやすい場所が良い」「幕があれば誰からも見られないのでは」。空き教室はなかったが、講堂のステージに幕を下ろし、男子更衣室として活用することにした。
小田環(たまき)校長は「更衣室がつくれないのは大人の思い込みだと子どもに教えられた。子どものプライバシーを第一に考え、学校は変わるべきだ」と話す。
子どもへの性教育に詳しい浅井春夫・立教大名誉教授(児童福祉論)は「更衣室で着替えることは、プライバシーの大切さを学ぶ教育でもある」と指摘。「すぐには設置が難しい学校でも、男女が時間差で着替えたり、教室以外の空きスペースを更衣室にしたり工夫できるのでは」と話した。
大人が決めた「当たり前」を疑うことが、子どもを守ることにつながる。(福冨旅史)
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記事の肩書や年齢などは2023年3月12日時点のものです
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