EU本部=ロイター
【ストックホルム=酒井圭吾】覇権主義的な行動を強める中国を巡り、欧州連合(EU)が見直しを進めている対中国戦略文書の原案に、台湾有事への危機感が盛り込まれ、緊張が高まらないよう関係国と関与していく方針が初めて明記されたことが13日、分かった。
読売新聞が入手した原案では「台湾海峡がエスカレーションするリスクは、パートナー国と協力して、現状の侵食を阻止する必要性を明確に示している」とし、「緊張が高まるシナリオに備える必要がある」と強調した。
台湾問題を「『一つの中国』の政策支持に尽力する」と従来の立場を維持しながらも、中国が軍事行動に踏み切るシナリオには「一方的な現状変更と武力行使は、世界の経済、政治、安全保障に甚大な影響をもたらす」と欧州への影響も明示した。
原案は、欧州対外活動庁(EU外務省)が、12~13日にスウェーデンの首都ストックホルムで開かれたEU外相理事会で加盟各国に配布した。EUは2016年、19年に中国との経済協力の重要性を強調する政策文書を採択している。4年ぶりとなる改訂文書は、今年6月の首脳会議での採択が目標となっており、加盟27か国の対中政策の指針となる。
過去の文書では、台湾問題は「一つの中国」政策への支持にとどめていた。改訂文書の原案には「インド太平洋地域の安全保障体制を支援する」ことも盛り込まれ、具体的には貿易や環境技術の協力を通じて連帯強化を図る方針が示された。
中国との経済関係については「デカップリング(切り離し)はしない」とし、米国と異なる考え方を強調した。一方、「(経済安全保障の)リスクと、過度の対中依存を軽減する格好の機会だ」とし、半導体や人工知能(AI)、宇宙技術などの分野で対中規制を敷いていくとした。
中国が、ウクライナを侵略するロシアに撤退を要求しない場合、「EUとの関係は決定的な影響を受ける」とも明記した。